横浜港に停泊中のダイヤモンド・プリンセス号の内部の様子について、神戸大学医学研究科感染症内科教授である岩田健太郎氏がYoutubeを通じ報告した内容がSNSで話題となっています。

ダイヤモンド・プリンセス号の船内からの「助けを求める声」を聞いた岩田健太郎氏はコネクションを通じて官僚に乗船を求め、現場の状況を目にするも、あまりにひどい対応に「SARSの時もエボラの時も現場にいたが、ここまで悲惨な状況は見たことがない」とコメント。

岩田健太郎氏はこの動画を国内外の多くの人に見てもらい、日本に対応を変えるよう声をあげてほしい、と求めています。

ダイヤモンド・プリンセス号の内部は「悲惨」岩田健太郎氏が告発

現在、話題となった動画は削除済み。

削除理由としては(1)「然るべき筋」から、ゾーンの区別が改善されたという情報を得た(2)国立感染研究所が船内の情報開示を進めた、などとして「ユーチューブの投稿は役割を終えた」ためとのこと。(出典:J-CAST)

当時の状況の記録を簡単にまとめると、以下の通り。

岩田氏ははじめに「この動画は(所属する)関係者及び関係機関には一切関係がない、個人としての見解」と前置きした上で、ダイヤモンド・プリンセス号の内部で見た状況に対し、次のように説明しています。

現場に感染症の知識をもつプロが1人もおらず、ルールもないため、感染対策が全く機能していない

・船内でウイルスの危険域の区分けができておらず、混合感染を起こす状態。感染を拡大させている状態にある。

・医療従事者の意思決定権がないために専門家が入っても数日で撤退していく。

・医療従事者(DMAT)らは自らを感染の危険に晒しながら、また自身が感染することを覚悟しながら患者の対応を行なっている。このことは業界ではありえないこと。

・乗船者も医療従事者と非常にかわいそうな状態だが、現場は感染症のプロでも「心の底から恐怖を感じる」状況。これまでに乗船した感染症の専門家らもあまりのずさんな管理に匙を投げる状態。

・院内感染のデータを一切とっておらず、誰が感染しているのかわからない。

といったことが明かされています。

20日、日本外国特派員協会で記者会見

岩田氏は20日、20日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見を開き、動画公開の経緯と目的を話しています。

訴えたかったことは「アメリカのCDCように専門家が意思決定できる組織がないことを立ち上げるべき」というものだったことも、こうした経験での情報整理で明らかになりました。

岩田氏は、動画で訴えたような状況が生まれた背景について、「CDCがないこと(lack of CDC)」を挙げ、

(今の現場には)原理原則がないからだ。感染予防には原理原則が必要で、その原理原則が具体的な手順につながる。その逆はない」
原理原則は官僚には決して作れない。感染症予防のトレーニングを受けていないからだ。経験もシステムもない。CDCには、そのすべてがある」

などと説明した。出典:J-CAST

海外の反応は

動画投稿後、岩田氏の動画はCBCなど海外メディアでも取り上げられ、「日本の感染症の専門家が、”日本は感染制御の取り組みが完全に不十分”だとして警鐘を鳴らしている」などとと報じました。

この動画に対し、米国疾病対策予防センターは、日本の努力は「船上の個人間の伝播を防ぐのに十分ではなかったかもしれない」とコメント。

Infectious disease specialist Kentaro Iwata of Japan’s Kobe University Hospital, who volunteered to help aboard the ship, described the infection control effort as “completely inadequate” and said basic protocols had not been followed.

The U.S. Centers for Disease Control and Prevention said Japan’s efforts “may not have been sufficient to prevent transmission among individuals on the ship.”出典:CBC

19日、米疾病対策センター(CDC)は日本と香港への渡航に際して注意を呼びかけています。

新型コロナウイルスの感染者増加を踏まえ、日本と香港への渡航に際して注意するよう呼び掛けました。注意レベルは3段階で最も低いレベル1の「通常の注意が必要」で、渡航の中止や延期は勧告していません。出典:JIJI.com

また、SNSでも岩田教授の動画は拡散。すでに多国語の字幕付で多くの人の目に触れることとなっており、コロナウイルスへの関心の高い中国では、対応が後手に回った中国政府の対応を現在の日本の状態に重ね、心配する人の声もありました。

こうしたことから諸外国が日本の感染阻止力に少なからず疑問や懸念を持ったことがわかります。

「プロも恐怖で撤退・提言すれば追放」専門家不在の船内

さらに、岩田氏自身の経験から、厚労省サイドのメンツ重視とも取れる不可解な対応も露呈。

現場には専門家がいないと言いますが、その理由について岩田氏は専門家が助言しても意見が厚労省で跳ね返される、また非常識な衛生管理状況に自身の感染への恐怖を感じ、現場から撤退しなければならない状況にあることを示唆しています。

動画で話した厚労省の対応状況については以下の通り。

・実質船内の衛生管理は現場ではなく厚労省の官僚が管轄しているが、プロや専門家の提言は一切受け付けず、対応もされない。

・岩田氏が現場のあまりの状況に現場で提言を行うと、D-MATを通じ官僚上層部の怒りをかい、即座に乗船の資格を剥奪された。

・乗船しているD-MATの人々も正しい感染症対応の情報を与えられていない。専門家の声が通ればきちんと正しい対応ができるのに、プロがその場にいないからできない。

岩田氏は、ダイヤモンド・プリンセス内部だけですら船内感染に誰も気づかない、専門家もいない、この状況を多くの人が知らない状態を危惧していると言います。

岩田氏はこの動画を英語でも発信しており、この発信は世界中で見られることになりそうです。

岩田氏の発言内容全文

また、岩田氏の発信には上記要点では表現できない、内部の状況を示す重要な表現がいくつも登場するため、以下に簡単に発言内容をまとめています。

岩田氏の動向と証言まとめ(Youtubeより)

厚労省職員とのコネクションを通じ、D-MATのメンバーとしてダイヤモンド・プリンセス号に乗船した。厚労省の上層部が良い顔をせず、足止めを食いながら許可が降りる。乗船の条件はD-MATの仕事をただやるだけだったらいい」奇妙な依頼”だった。

現場ではD-MATチーフドクターから「何も期待していない、感染のプロなら感染の仕事をやるべきだ」と言われ、現場の問題点を確認していった。

それはもうひどいものだった。

この仕事を20年以上やっていて様々な身の危険を感じることがあったが、自分が感染症にかかる恐怖を感じたことはなかった。SARS、エボラに対する対策を熟知しているから、ど真ん中にいても怖くなかったが、中はとても悲惨で「心の底から恐怖」を感じた。

感染症の場合、レッドゾーン、グリーン・ゾーンをきちんと分けて、レッドゾーンでは防護服やマスクを着用、グリーン・ゾーンではつけない、といった形でウイルスから身を守るのが鉄則。しかしダイヤモンドプリンセス号の中はグリーンもレッドも区別がつかない、ぐしゃぐしゃの状態。

患者も感染者、健常者の区分けができていない上、医療従事者はマスクをつけたりつけなかったり。熱のある人が自分の足で医務室にいったりといったことも平気で行われている。

医療従事者らも「自分たちも感染すると思っている」。

こうした状態は、(感染症)業界で言えばご法度。これまでに(日本)環境感染学会やFETPが乗船したが数日で出て行ったが、自分たちが感染するのが怖かったのではないか。それも無理もない。プロなら怖くてしょうがない。

現在、(岩田氏は)自分自身を隔離して、誰にも会わないようにしている。

安全と安全じゃないところをきちんと区別して、マスクや防護服を安全に脱ぐところまでができなければ、防護服やマスクは何の意味もない。自らの安全が保証できないときに、誰も守ることができない。

超非常識なことを平気で行い、プロの感染者がいない。

現在、ダイヤモンドプリンセス号の内部は官僚の管轄で、専門家らの意見は受け入れてもらえない状況にある。自身も何度か連絡したが、非常に冷たい態度を取られ、提言も無視された。

実際、乗船後にD-MATのカンファレンスで提言をすると、その日の夕方のうちに(即座に)許可を剥奪された。

上層部と取次を行なってくれた完了曰く「誰とは言えないけど、(岩田氏に対し)ムカついた人がいる」

プロがいなくても構わないのか?と聞いた。

D-MATは感染のプロではない。結果的にD-MAT経由で岩田氏は撤退を余儀なくされたが、彼らが悪いわけではない。D-MATの人々も情報が共有されていないために、感染の危機に晒されている。

方法があればきちんと正しい対応ができるのに、プロがいないからできない。

現在の日本の感染対策はひどい。

2003年のSARSの時ですら、感染対策が何とかできていた。中国は情報公開を行い、透明性を重視することが信用のために重要であることを知っていたから。情報統制の中でも、規制は確実に緩めている。

しかし日本は、発熱者の統計データなどを一切取っていないことがわかった。院内感染に気づいてもいない、専門家もいないこの状況は悲惨。また、このことを多くの人が知らない状態を危惧している。国内だけでなく、海外の人々も誰も情報を知らないは大きな問題。

こうした情報を隠蔽することはもっと悪い。もっとちゃんと内部に専門家が入り、現場の人々を必要がある。彼らは本当にお気の毒だった。

できることなら、このことを学術界などで取り上げ、日本を変えて欲しい。出典:Youtube