発達障害やうつ病、更年期障害や適応障害など、さまざまな“ハンディ”を持つ人たちをどう“うまく動かすか”をテーマにした書籍『職場の困った人をうまく動かす心理術』。その内容や表現方法がSNS上で波紋を広げるなか、装画(表紙イラスト)を担当したイラストレーターが、自身のnoteで製作当時の心境を明かしました。
動物に例える指示に「危うさを感じた」 変更はディレクションによるものだった
本書は、「うつ」や「パニック障害」「適応障害」「更年期障害」など、本人の意思ではどうにもならない特性を“困った人”としたうえで、それを職場でどう“コントロール”するかを指南する内容。その構成や挿絵、表紙キャッチコピーなどが「差別的」「」「配慮がない」と非難を浴び、炎上しています。
X上での炎上はすぐに、本作のイラストレーター・芦野公平さんの耳にも届いたそう。
出版社に許可を取った上でXとnoteを通じ、「装画制作の経緯について」というnote記事を投稿。読者から特に批判された「動物に抽象化された困った人たち」の表現について、自身の立場と悩みを率直に語りました。
担当した装画に関して、イラストレーターとしての経緯と考えをまとめました。
— 芦野公平 kohei ashino (@ashiko) April 16, 2025
ご一読いただけましたら幸いです。
装画に関するご報告と経緯のご説明|芦野公平 @ashiko #note https://t.co/VodQxwCqiB
要約すると
- 当初のイメージは人のキャラクター▶ディレクションによって動物的な表現へと変更された
- “困った人”を動物に例えることは、誤解を招く可能性があると分かっていたものの、制作チームとの関係やスケジュールの都合で深く議論をすることができず、結果的に受け入れてしまった
- 製作中はポジティブな内容としてとらえており、製作チーム全体でも差別的な意識を感じなかった
当該作品では、キャッチコピーや題材、文章までイラストについても「障害がある人のみを、ナマケモノやサル、ヒツジといった「動物」に例えた」ことが非難の対象となっていました。
しかしこれはこれが当初提出した芦野さんのラフイラスト(この時は動物ではなく、人として描かれている)が、ディレクションの指示により動物に変更となったのだそうです。
これまでの批判の声の中にあった「製作者サイドは誰も非難されるほどの内容だと気付かなかったのか」という声については「背景理解の後には皆がいきいき働ける未来があるというポジティブなテーマが前提の装画制作であり、編集者との具体的なやりとりに差別的な意識は感じていなかった」のだそう。
「人間を動物に置き換えて描くこと自体に差別意識を感じなかったか」という疑問が当然あると思います。前提として、読者の背景理解の後には皆がいきいき働ける未来があるというポジティブなテーマが前提の装画制作であり、編集者との具体的なやりとりに差別的な意識は感じていなかったため、「あり得ない」とは感じずに受け入れました。
しかし、ポジティブな印象とは別に、表象レベルで批判され得る可能性を孕んでいるという自覚も一方にありました。しかし、テーマや変更意図がポジティブなのだからと指示に従いました。
このように、意図しない炎上に対する戸惑いや、クリエイターとしての立ち入れないジレンマがあったこともわかりやすく説明されています。
「説明に感謝」「出版社の説明を待ちます」イラストレーターの行動に感謝と励ましの声
コメント欄にはさまざまな反応が寄せられました。責任の所在を問う声もある一方で、イラストレーターの立場に理解を示す声が多く見られました。
このnote投稿は既に3000を超えるスキが届いており、関心の高さと、noteの説明に納得し応援する声が多いことがうかがえます。
「どんな仕事にも依頼者=演出家がいて、依頼通りに描くことが基本。それができなければ仕事にならない。描いた方を責めるのは違う」
「発達アリでも疾患でも責められてるわけではなく、そうでない人たちが無知で理解できていないことが問題。この本を通じて、社会の理解が深まることを願います」
「差別される側の立場として、この本の問題には注目しています。イラスト担当の方がきちんと説明してくれて安心しました。あとは出版社や著者の対応を見たい」
一方、出版社や著者からは現時点で公式な声明は出ていません。すでに一部ネット書店では販売ページが削除されており、今後の対応が注目されます。