美術館で破壊行為の高校生に賠償責任は?「被害届出すとは相当酷い」生徒に厳罰求める声も

今月6日、新潟市教育委員会と新潟県十日町市はそれぞれ、越後妻有里山現代美術館MonET(新潟県十日町市)を訪問していた市立黒埼中学校の修学旅行生数名が4月に一部の作品を損壊したことを明らかにしました。

越後妻有里山現代美術館MonETは5月に被害届を提出し、現在も警察による捜査が行われているとのこと。損壊した作品2点のうち一方は現状修復不可能になっており、作品を知る人からは生徒への「厳罰」を望む声も上がっています。

美術館で破壊行為の高校生に賠償責任は?

今回の事案について、越後妻有里山現代美術館MonETは5月に被害届を提出しているため、美術品の所有者は作品を壊されたことについて、美術展を経営している人は展示を維持できなくなったことによって被った損害を高校生、あるいは学校側に請求することになりそうです。

基本的には美術館に展示されている作品は保険がかけられていますが、美術作品を意図的に破壊したのであれば、賠償責任から逃れることはできません。

越後妻有里山現代美術館MonET(新潟県十日町市)で被害を受けたのは「Wellenwanne LFO」(カールステン・ニコライ)と、「LOST #6」(クワクボリョウタ)の2点。

「Wellenwanne LFO」は低周波で水面を振動させ、広がる波紋をスクリーンに映す作品でしたがパイプが曲げられており(仮復旧を終え現在は公開可能に)、「LOST #6」は鉄道模型が光を放ち織物器具に当たって影を壁に映す作品でしたが、踏み荒らされて再現ができず、今後も展示はできないとのことです。

事件があったのは今年4月21日。中学生を引率していた教諭が損壊に気付き、発覚。新潟市教育委員会と学校は十日町市に謝罪し「複数の生徒が関わり壊してしまった」と説明したとのこと。

被害額は想像がつきませんが、アメリカでは作品を破壊した個人に2千万円の賠償を請求した事例もあります。

「被害届出すとは相当酷い」生徒に厳罰求める声も

越後妻有里山現代美術館MonETでは5月2日に十日町警察署へ被害届を提出していますが、その背景に。現在も捜査がつづけられているが、新潟市と十日町市では、今回の経緯が固まったため発表に至ったとしています。

美術館HPには「来場者のマナー違反による接触が原因の破損」と記載も。報道では「パイプのねじ曲げ」「修復不能なまでに踏み荒らされていた」といった表現からも、今回の事案が高校生の悪戯ということで看過できるものではなかったことが伝わります。

Twitterでは「美術館側が被害届出すとは相当酷い状態なのだろう」という声、「相手が子どもでも容赦せず、警察に被害届を出すべき」など、厳しい声が多数寄せられました。

学生が公共の展示物を破壊する事例は過去にも。

沖縄戦の際に住民83人が「集団自決」に追い込まれた沖縄県読谷(よみたん)村の洞窟「チビチリガマ」を荒らしたとして、少年4人が器物損壊の疑いで逮捕された事件がありました。少年らは肝試しと称して洞窟に侵入、慰霊のための千羽鶴などを引きちぎるなど、看板2枚や額1枚、千羽鶴4束を壊した疑い。

保護観察処分を受けた4人はその後、犠牲者に寄り添う気持ちを込め、遺族会の与那覇徳雄会長(64)、彫刻家の金城実さん(79)らと野仏12体を制作、今もその野仏は「チビチリガマ」の入り口に通じる道に設置されていると言います。

少年らにもこうした更生のための手が差し伸べられるのでしょうか。今後も厳しい眼差しが向けられることとなりそうです。

出典:朝日新聞「ガマ荒らした償い、野仏12体 少年たちが刻んだ思い」「少年ら「肝試しだった」 チビチリガマ荒らした疑い」

参考:「修学旅行の中学生が展示作品損壊 新潟・十日町「大地の芸術祭」」