2025年大阪・関西万博の会場に登場した「石のパーゴラ」が、SNSで議論を呼んでいます。
その見た目はまさに“誰も見たことがない”レベルのインパクト。頭上にずらりと吊るされた巨大な石、石、石!斬新すぎるデザインに「これぞ万博」「挑戦を応援したい」と好意的な声がある一方で、建設や土木業界の“ガチ現場勢”からは「これは怖すぎる……」「絶対近づきたくない」という声も続々。意見は真っ二つに割れているようです。
大阪万博「石のパーゴラ」問題
「誰も見たことのないものを」――“吊るされた90トンの石”
設計したのは、工藤浩平建築設計事務所(東京・台東)の工藤浩平氏。
「誰も見たことがない施設をつくりたい」という想いから生まれた「石のパーゴラ」は、その名の通り750個もの石材(総重量90トン)をワイヤーで吊るすという、類を見ない構造。
ネックレスのように連なる石たちは高さ最大9.5mの位置に吊り下げられ、訪れた人の頭上を覆います。延床面積約500m²、休憩所・トイレ・案内所・水遊び場・キッチンカー乗り入れスペースなども併設された、実用性とデザイン性を兼ねた休憩施設です。
今回のSNSでの反応に対しては、設計者が次のように反応する場面も。
みなさまへ
— Kohei Kudo/工藤浩平 (@kopppepan) September 5, 2024
休憩所2について設計者である私からを発信いたします。
〇休憩所2の建物概要
休憩所2は、休憩所・案内所・トイレ等の屋根と壁を持つ建物と、屋外にあるパーゴラで構成されています。壁と屋根で囲まれた屋内の休憩所が、休憩所2の敷地内にあります。
〇設計コンセプト…
工藤さんはSNSで「建築基準法をはじめとした各種法令を遵守し、構造計算や各種専門家へのヒアリング、強度試験などを行った上で設計・施工を進めております」と述べ、安全性を強調しています。
こうした経緯や安全性への説明は行われていますが、この休憩所についての評価はいまだ両極端に分かれています。
SNSでは評価が真っ二つ:「応援したい」VS「危険、安全とは言えない」
実際に訪れた一般客からは、
「思いもよらなかったものばかりで面白く、応援したい。」
「キチンと説明責任果たそうとするなら設計者を応援する」
「みんなが言うほど危なそうに見えない」
「意外と涼しかった」
といった好意的なコメントも。
大阪関西万博の「休憩所2」石のパーゴラ(日かげ棚)。つり橋の様なメチャクチャ太いワイヤーで出来ていて危険な感じは無し。普通はあり得ない物だけど、あり得ない事に挑戦する場を作るのも万博の役割。なんでもかんでも袋だたきにして、炎上させて騒ぎ続けて続けると『挑戦しない』事が最適解になり… pic.twitter.com/1azPuulPrw
— ロング@再都市化 (@saitoshika_west) April 15, 2025
しかし、こうした“絶賛派”に対して、この「石のパーゴラ」にへの不安の声も多く投稿されています。
「石材は天然の傷が入っていたり、切り出した後にクラック(ヒビ)が入るし、温度変化にも弱い。」
「剥き出しの石材だったらもし5月で雨⇒真夏日のコンボやられたら最悪割れるで」
「ワイヤーは大丈夫だろうけど品質が一定の人工素材ではない、天然素材の石でやるのが不安」
「下に人が通らなければ話は違った。休憩所としては心理面でも落ち着かない」
大阪関西万博の「休憩所2」石のパーゴラ(日かげ棚)。つり橋の様なメチャクチャ太いワイヤーで出来ていて危険な感じは無し。普通はあり得ない物だけど、あり得ない事に挑戦する場を作るのも万博の役割。なんでもかんでも袋だたきにして、炎上させて騒ぎ続けて続けると『挑戦しない』事が最適解になり… pic.twitter.com/1azPuulPrw
— ロング@再都市化 (@saitoshika_west) April 15, 2025
「いや、待って。それ、現場目線で言うと“アカン”やつ」
特に注目されているのは、土木・建築など現場経験者のリアルな声です。
あるユーザーさんは「何トンもの重いものを吊り続けること、割れる可能性のある天然の岩を使用することがあり得ない。ましてやその下を休憩所とするなど正気じゃない」などを指摘。
「まぁこれよな。工場とか現場に出入りしたことある人ほどヤバいと感じると思う。」
と投稿しています。投稿には「危険予知6項目」とされる画像も添付され、共感の声が多数寄せられました。
まぁこれよな。
— 銀蔓a.k.a.“カズラノフスキー” (@vinethesilver) April 19, 2025
工場とか現場に出入りしたことある人ほどヤバいと感じると思う。 https://t.co/c3dEOts8r6 pic.twitter.com/4mNgvxvCUX
「当方、土木作業員です。吊り荷の下に入らないのが当たり前の世界なので、ここは怖くて入れない」
「クレーン作業では“ワイヤーは切れるもの”と教わってきた。安全計算されてても心理的に無理」
「28mmのワイヤーでも新品で切れて落ちた事故を見てきたので、ワイヤーにぶら下がる構造は信用できない」
「吊り荷の真下でくつろぐのは、職業的に無理です……」
「現場仕事に関わったことある人なら、あんな危険リスク満載なところに大金払って行こうなんて考えないと思う。自分お命守るのが一番大事。」
現場作業員からの「これは感覚的に無理」という声が可視化されたのは、今回が初めてかもしれません。
安全性については十分な検査が確認されていると発表
万博協会は、以下のような安全対策を講じていると説明しています。
構造設計はクリア:構造設計の専門家が計算を行い、民間の指定確認検査機関による審査を受け、建築基準法に基づく構造安全性に適合。
石材の強度試験もクリア:使用する花崗岩については大学協力のもと引張強度試験を実施し、構造計算で想定される応力を上回る耐力を確認。
原寸大模型でのテストもクリア:原寸大の模型を作成し、石ワイヤーの挙動を観察。台風時にも大きな揺れや石同士の衝突は確認されなかったと報告されています。
石の割れも検査クリア:石材の孔あけには削岩機を使用することで、中にヒビのある石を除外するという方法により、検品と検査はクリアしている。
安全対策を加える:ワイヤーを太く、下にはネットも張っている。
つまり、公式としては「構造的に問題はない」との立場。
「設計上安全は担保されているはず」との声もある一方で、「現場を知っている人ほど不安に思う構造」だと感じる人は少なくないようです。
「普通じゃないものを見せる」のが万博の醍醐味。とはいえ“安全”と“安心”は似て非なるもの。
安心してくつろげる空間としては現状、厳しい評価となっています。