ロンドンに現れたクジラオブジェに「石巻」と書かれた海洋ゴミが‥環境団体の「意図的なヘイト」かと話題に

イギリス・ロンドンの金融街「カナリー・ワーフ」に突然現れた、海洋ゴミで作られた巨大なクジラのオブジェがSNSで「日本へのヘイト作品なのかもしれない」と話題となっています。

環境問題開発のオブジェに東北のコンテナが多数見つかる

発端となったのは、以下のツイート。

「たくさんの日本語が書かれた漁業用品が含まれていて、石巻の文字を見てハッとした」と投稿されたX(旧Twitter)のポスト。

よく見るとその言葉の通り、オブジェを構成している漁業用のカゴには、日本語で「石巻魚市場」「「須藤丸 久慈港」「〇〇水産」といった言葉が確認できます。

作品の正体は「Skyscraper(the Bruges Whale)」

このオブジェは、アメリカの建築デザイン事務所「StudioKCA」が2018年に制作した作品「Skyscraper(the Bruges Whale)」です。

制作者はジェイソン・クリモスキ氏とレスリー・チャン氏の2人。漂流する海洋ゴミの問題を訴えるため、実際に海から集めたゴミで高さ12メートルのクジラ型アートを作成したといいます。

環境問題に目を向けさせる作品としてはインパクト抜群ですが、使われているゴミの中には日本語や東北の地名などが多数含まれています。

東日本大震災を経験した多くの人々にとっては(津波によって多くの被害を出したことを物語っているため)、複雑な心境の声が上がりました。

しかもとても目立つことから、「他に何か意図があるの?」「クジラにも意味があるのでは」と注目が集まっています。

東北の名前、クジラ‥環境啓発だけ?真意に賛否

SNSでは、この作品に対して様々な声が上がっています。

  • 「被災地の名前が入っているのは偶然ではないと思うと、胸が痛む」
  • 「環境への意識は素晴らしいけれど、素材の選び方には配慮が足りない」
  • 「白人のリベラル系団体が日本をターゲットにしたヘイト表現なのでは」

いう意見もあれば、

  • 「中国やアメリカでは批判を恐れてできないから、日本が狙われたのでは?」
  • 「環境問題に対するメッセージとしては伝わるが、震災の記憶を利用するのは許せない」

という、作品の「裏の意図」に対する疑念も目立ちました。

日本の捕鯨文化が非難されてる?「ヘイト説」がある理由

このクジラ型のオブジェが物議を醸す背景には、日本の捕鯨文化と、それに対する海外の一部団体の強い批判があります。

日本の捕鯨文化とは?

日本では古くから、捕鯨は食文化の一部として存在してきました。現在もクジラ肉は貴重なたんぱく源として知られます。

1990年代以降は世界的な捕鯨への反対運動が強まったことから、日本は国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退などを経て現在は国内の一部地域でのみ、調査・商業捕鯨を続けています。

対立する国際団体と活動家たち

世界には、捕鯨に強く反対する活動家グループがあります。これらの団体は、ときに過激な抗議活動を行い、日本の調査捕鯨船を妨害するなどの行為で注目を集めてきました。

一方で、「捕鯨は文化の一部として保護されるべき」とする意見もあり、捕鯨問題は文化・宗教・倫理観が複雑に交差するグローバルな論争の一つと言えます。

「海洋ゴミアート」はヘイトなの?

問題のオブジェはあくまでも、「環境問題」を訴える作品として制作されたとされています。しかし、以下の点が疑問視されています:

  • なぜ、日本語ばかりの漁具が目立つ場所に配置されているのか
  • なぜ、震災被災地(「石巻魚市場」「「須藤丸 久慈港」)の名前が入った道具が使われているのか
  • なぜ、捕鯨を象徴するようなクジラの形を採用したのか

こうした“偶然とは思えない”要素の重なりから、SNSでは「環境」を装った文化攻撃ではないかという意見も見られます。

一方で、「悪意があったと決めつけるのではなく、文化や歴史の違いによる“認識のズレ”なのかもしれない」

「シンプルに環境問題への発信を強化すべきというメッセージと捉えることもできる」

という声もあり、受け止め方には立場や感情による大きな違いがあるのも事実です。

「被災地の名前を使うこと」が引き起こす新たな論点

多くの人から重く受け止められているのは、東日本大震災で被害を受けた地域の名前が含まれている点です。

石巻などの地名は、震災で多くの命が失われた場所であり、今なお心の傷が癒えない人も少なくありません。

それだけに「環境問題を訴えるために、震災を連想させる素材を選ぶべきだったのか?」という疑問は、極めて重いものです。