ダイソーの墨汁がエジプト書家を救う?!国立民族学博物館の展示にびっくり→背景を知ると胸アツだった話

大阪・万博公園内の国立民族学博物館で開催中の企画展「点と線の美学 アラビア書道の軌跡」で、100円ショップ・ダイソーの墨汁が展示されていると話題になっています。
「なぜ100均商品が!?」あまりにもシュールな姿も、その背景には実は伝統文化をめぐる意外で深い事情がありました。

ダイソーの墨汁がアラビア書道展に?シュールな展示にSNS騒然

「アラビア書道の展示で笑っちゃった。「ダイソーの墨汁」キャプションが良いw」

国立民族学博物館を訪れた紀泉@喜真草堂さんのこんなX(旧Twitter)投稿が話題になっています。

展示されたのは、「ダイソーの墨汁」とキャプションがついた墨汁のボトル。

まぎれもなく、何の変哲もないダイソーの墨汁。こどもたちがいつも習字セットに入れているやつだ・・!!
SNSでは「シュールすぎる」「博物館で見るものじゃないw」と笑いが広がりましたが、その後の引用ツイートで、意外な背景が明かされました。

じつはエジプトでは、伝統的な墨が絶滅していた

実はアラビア書道の本場・エジプトでは、かつて使われていた伝統的な墨が市場から姿を消してしまっていました。

アラビア書道(カリグラフィー)は、日本同様に文字を芸術として高めた文化で、特にイスラム世界で重視されてきました。

伝統的に使われていたのは、「スーム」(Suum)と呼ばれる、植物性の煤(すす)を主成分とした墨汁

しかし20世紀後半、欧米から輸入された工業製インク(アイロンインクなど)が市場を席巻。
安価で手に入りやすいインクの普及により伝統的な手作り墨汁は生産されなくなり、ほぼ絶滅してしまったのです。
結果、エジプトの書家たちは墨を自作するしかなくなります。

書家たちの苦悩 「自作」か「代用」か

墨汁が消えた結果、多くの書家たちは自作を強いられました。
伝統製法では、アカシアゴムを使ったり、植物由来の煤を混ぜたりと非常に手間がかかり、しかも質が安定しません。
欧米の市販のインクは粒子が粗く、筆の運びに支障をきたすため、アラビア書道の精緻な表現には向きませんでした。そんな中、「遠い日本に理想的な製品がある」と知られるようになったのが、ダイソーの墨汁だったのです。

背景を知ると胸アツ・・ダイソー墨汁がエジプト書家救う

ダイソーの墨汁は、もともと日本の小学生向けに大量生産されていたもの。
主成分はカーボンブラック(炭素微粒子)で、粒子が非常に細かく、筆の運びがなめらか
しかも、水とニカワ(膠=動物性ゼラチン)を適度に含むため、アラビア書道に求められる濃淡表現にも適していたのです。

エジプトでは、輸入品として800円前後で手に入ることから、今や多くの書家にとって「なくてはならない道具」となっています。

日本で質の高い墨汁が今も作られ続けているのは小学校教育に「書写」があるおかげ。
日本では明治時代以降、すべての子どもたちが毛筆を学んできました。
この「安定した需要」があったことで、墨汁メーカーも大量生産・品質維持を続けることができたのです。

伝統文化は、需要がなければ一気に衰退します。特に職人技術は、1〜3世代(約50〜100年)で簡単に消えてしまうと言われており日本も他人ごとではなさそう。

たった100円の墨汁が、遠いエジプトで伝統文化を守っていた――。
最初は思わず笑ってしまった展示も、背景を知ると胸が熱くなる話でした。
日本に根付く書道文化、そしてそれを支える日常の「当たり前」のすごさを、改めて感じさせられますね!

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