週刊少年ジャンプで連載中の漫画『僕のヒーローアカデミア』の登場キャラクターの名前が「戦時中の日本の部隊を想起させる」とする苦情を受け、集英社は3日、コミックス収録時に該当キャラクターを改名することを発表しました。
国内外に支持層を持つ「ヒロアカ」。今回登場した「志賀丸太(しが・まるた)」の読み「マルタ」が「旧日本軍が使用していた差別用語」だとして、一部の読者から説明を求める声が上がっていました。
この事実を知った国内のファンからは作者の命名が「意図的ではない」ことを主張する声が多数上がっています。
『ヒロアカ』丸太の名前に集まった非難
作者・堀越耕平さんの作品『僕のヒーローアカデミア』で非難の対象になったのは、総合病院の創設者などとして登場する「志賀丸太」。
出典:Twitter
この志賀丸太の漫画内での役柄はヴィラン(敵)サイドの使者として扱われていた「脳無」を密かに製造しているとされるキャラクターでした。
この「脳無」は登場回の前までに「人間の尊厳を踏みにじられ、改造された兵器」といった描写があり、これが第二次世界大戦中に実在した人体実験の部隊を連想させるということのようです。
ツイッターでは「すぐに連想した人も少なくなかったのでは」といった声も。
『ぼくのヒーローアカデミア』は前の話で、ヴィラン連合が用いる「脳無」は、人間の尊厳を弄んだ悲しい兵器であることが明かされ、ヴィランが許されざる悪であることを改めて強調した後でしたからね。人体実験やっていたドクターの名が「丸太」なのは、すぐ連想した方も少なくなかったのでしょう。
— ふぎさやか (@maomaoshitai) February 3, 2020
韓国の一部の読者はこのことを問題視し「アンチアカウント」を作成、「キャラクターの改名と作者の釈明を求める」として、フォロワー2000人以上がこれに賛同していました。
우리는 일본 점프에서 연재 중인 만화 <나의 히어로 아카데미아>(이하 히로아카)에서 작가가 세계 2차전쟁에서 일본이 자행한 unit731실험의 피해자를 부르는 ‘마루타’로 빌런 이름을 설정한 것에 대한 해명과 수정 요청을 촉구하기 위해 만들어졌습니다.
— 히로아카 총공계 내일도 합니다 (@Heroaca_000) February 3, 2020
さらに、作者のアカウントに対しても英文や韓国語で「マルタについて説明してください」「謝罪してください」といった声も寄せられる「炎上状態」に。
『ヒロアカ』丸太の由来は「役に立たない人」では?
一方で、国内のヒロアカファンの間ではこれに反論する声が多数上がっています。
作者を擁護する声の多くは、作者のネーミングセンスが直感的であり、わざとではなかった、と主張しています。
また、これまでの作者のネーミングセンスから考えれば、本当の丸太の名前の由来もこんな感じなのでは、という声も。
ヒロアカ、丸太の名前が人体実験の被害者の隠語という事で怒ってる人がいるけど、どちらかというと「無個性」で、「でくの坊」だった緑谷出久の対比、同じく「無個性」で、デクが将来あり得えたかもしれないifの存在として、役に立たない者を意味する「丸太ん棒」からとった名前だと思うんだよなぁ pic.twitter.com/SMFBzJnt48
— 社畜のよーだ (@no_shachiku_no) February 3, 2020
直感的な名付けがよくわかるのは、ヴィラン連合のキャラクター名からも感じられそう。
例えばヒロアカの敵、ヴィラン連合。キャラクターの本名はほとんどが漢字で、漢字の持つ意味から特性や個性がわかる名前が多いことがわかります。
ヴィラン連合のメンバーの一部
個性:崩壊
本名:渡我被身子(とが ひみこ)・・他人の皮を被る個性
個性:変身
本名:引石健磁(ひきいし けんじ)・・あらゆるものを引き寄せる個性
個性:磁力
本名:分倍河原仁(ぶばいがわら じん)・・なんでも2倍にする力
個性:二倍
出典:ピクシブ百科辞典
「漢字や日本語読みで意味を持たせたキャラクター」は、海外では音読み「MARUTA」でしか伝わらないことが海外での反感を生んだ大きな原因と言えそうです。
「志賀丸太」の名前の由来については、このほかにも複数の推測が上がりましたが、どれも日本語的な解釈で海外では理解が難しい意味付け。
国内では楽しく読むことができる漫画も、グローバルになれば解釈もそれぞれ異なる、ということが示された驚きの騒動となりました。