飯塚幸三被告の禁固求刑とは・実刑や監収される?獄中生活は快適との見方も

2021年7月15日、飯塚幸三被告(90)が主婦、松永真菜さん(当時31歳)と長女莉子ちゃん(同3歳)を自動車ではねて死亡させた事故で、東京地検(下津健司裁判長)は公判で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)としては最も刑の重い、『禁錮7年』を求刑しました。

9月には判決が予定される中、依然として自らの過失を認めない被告に、実刑を求める声は絶えません。禁固求刑って何?実刑は確定なの?と言った疑問に対する答えをまとめます。

飯塚幸三被告の禁固求刑とは・実刑や監収される?

自動車運転処罰法違反(過失致死傷)で禁錮7年を求刑となった今回の公判。

求刑に対し、判決では実刑判決、または執行猶予付きの実刑判決が決まります。今回の罪の重さを考えれば実刑が相当、と言う世間の意見が圧倒的ですが、9月の判決では、裁判の通例的に見ても、5〜6年の実刑判決以上のものが適当と考えられます。

裁判所は求刑に拘束されるわけではありません。とはいえ実務上は、求刑を参考にして判決を言い渡しています。

 一般的に、執行猶予がつくケースでは求刑通りの刑になることが多いです。これに対して実刑判決のケースでは求刑の8割程度になることが多いです。

出典:ウェルネス法律事務所

しかし、「禁固刑」とは、懲役刑よりも軽い刑事罰とされています。

懲役刑と禁固刑の違いは、労務作業が伴う刑罰かどうかの違いがあり、懲役刑よりも禁固刑の方が罪が軽いもの、と見做されており、禁固刑が適用されるのは、悪意のない、または軽い犯罪が多いと言う通例もあります。

一方で、故意にも近い重過失によって引き起こした悪質な事故が認められた場合は、飯塚被告の過失致死傷罪よりも罰の重い「危険運転致死傷罪」に当てはまり、この場合は人がケガをした場合「15年以下の懲役刑」に。禁固刑も無しというのです(自動車運転処罰法2条)

こうした2つの罪状の違いに、納得が行かない人は多いかもしれません。

実刑や監収されても「ゆるい環境」

禁固刑の場合は実刑となった場合でも「刑務所に行くが、労働は強制されない」と言う意味を持ち、言い換えれば「刑務所に収容はされるが娯楽もそこそこある場所で、ただそこにいればいい」のです。

ケースにもよりますが、労働がない受刑者は「食事を食べて部屋でテレビを見ているだけ」だったという声もあり、「限りなく娑婆に近い天国」と言った声も。

刑事罰の順番は重い順に 死刑→懲役刑→禁固刑→罰金刑→拘留→科料→没収 ですが・・

遺族の松永拓哉さんは、自身のブログに第9回公判で述べた、心情等の意見陳述を記載しています。

ここでは飯塚被告に対し、償いきれない罪をせめて最大級の罰で反省するよう、強い言葉で綴っています。

私は、実刑判決が出ると信じています。しかし、高齢や健康状態を理由に収監されないかもしれません。被告人側もそれを見越しての無罪主張でしょうか。

2人の尊い命や、未来はもう戻らず、被告人が責任を取りきれることはありません。だから、せめて重い実刑判決でないと、私達遺族は到底納得できないし、社会に大きな禍根を残すことになると思います。出典:池袋暴走死傷事故 遺族のブログ

 

獄中生活は快適との見方も

この事件をめぐりネットで不安視されるのが、被告の罪に相当する実刑にはならないだろうという予想。しかし、調べていくと「実刑」となった場合でもこの「想像以上に軽い刑罰」は現実に起こり得る様です。

先ほど記した通り、禁固刑には労働の強制がありません。さらに、「交通刑務所」へ収容されると、世間の予想に反して快適な生活が待っているといいます。

交通刑務所の場合は「寮」で快適生活

交通事故の懲役刑もしくは禁錮刑などの判決を受けた受刑者が収容される施設として存在するのが、交通刑務所。

交通刑務所の舎房は4つの寮に分かれ、独房タイプの「新入寮」から下位順に「準開放寮」「開放寮」「希望寮」とグレードアップするといいます。

鉄格子があ理、冷暖房もない独居房は「新入寮」と呼ばれるものだけで、他は徐々に制限も少なくなり、テレビや押入れ、おやつなども用意されているというから不思議。

実際に元受刑者の体験記を読むと、次の様な様子が記されていました。

この刑務所には、開放寮という新築の特別な舎房があった。
仮面接が終わって仮釈放が近く優良な受刑者のみ入居できる舎房だ。
この舎房は開放処遇になっていて、居室には鍵をかけない。
入居する時点で制限区分が2種になることになる。
制限が緩和されたことで本面接を待たずに調髪が許される。
また、検身もすべて免除される。
トイレ、浴室、洗面所、キッチン、洗濯機、冷蔵庫、娯楽室、食堂、庭など生活に必要な設備が全て揃っていて、自由にしようできる。

各個室にも液晶テレビがあり、朝からつけて出房まで見ていた。
庭もあり、自由に出ることができ、好きなときに布団も干すことができる。
娑婆に近い状況にして自主性を養うというのが目的で造られた施設だったが、本当に居心地がよかったが、他の受刑者の嫉妬をかうおそれがあるので、あまり細かいことは教えないようにしていた。

出典:はじめての刑務所

一般の刑務所とは形式が異なり「開放処遇」、規制がゆるく自由度が高い刑務所のようです。

もちろん、「交通事故=交通刑務所」とは限りません。事故状況や過失の度合いによっては、通常の刑務所へ収容されるケースもあるといいますが、想像以上に“ゆるい”現実がありました。