シャインマスカット農家に打撃「ライセンス供与」誰が得する?キックバック不安視の声も

25日、農水省がブドウの高級品種「シャインマスカット」の栽培権(ライセンス)をニュージーランドに付与する方向で検討していることが明らかにされました。

これに対し、海外での販売に苦心する日本の農家からは反発の声が上がっており、ライセンス供与へ舵をきった農水省に対しSNSでは「これ本当に日本にメリットあるの?」「これはキックバック目的では」といった声が上がっています。

シャインマスカットの「ライセンス供与」誰が得する?

シャインマスカットのライセンス権で得をするのは本来、国全体が対象になっています。ライセンスは農林水産省が所管する国立研究開発法人・農研機構(国民の税金を投じて研究がされている機関)が所有。日本国・国民の知的財産でもあり、日本の国民は自由にその種の育成を行うことができます。

ライセンス供与が行われることで、対価(ロイヤリティ)は農水省が受け取り、この収入は正式には「新たな研究費」として使用され、その研究成果が国民に還元される仕組み。

そのためライセンス供与は日本の農業の発展に貢献する=得をするのは国民というのがポジティブな見解ですが、同時に見逃せない問題もあります。

シャインマスカット農家に打撃も

国民に今回ライセンス供与を行うと、ニュージーランドの現地農家が日本と同じ品質のシャインマスカットを一年中安定して作ることができるようになり、現在問題視されている韓国や中国の「海賊版シャインマスカット(日本から流出した苗木で作られた商品)」の流通の抑え込みを狙うと言います。

これにより

  • 一年中生産でき、日本は安定したロイヤリティの獲得が見込める
  • ニュージーランド経由で海外への市場拡大が見込める
  • ニュージーランドの生産体制が整っており、低コストでの販売が可能
  • 日本のブランド力の回復が見込める

といったことが期待されているというのが農林水産省の考えだと言います。

しかしSNSでは「海外にライセンス供与するのではなく、日本産を海外に販売することに注力することの方がよほど大事だ」という声も。なぜなら日本のシャインマスカット農家には全く利益が還元されないという大きな問題が残るからです。さらに、コストの面で価格競争ではより劣勢になり、日本農家の海外市場への進出への道が閉ざされる可能性が大いにあります。

これに対し、山梨県長崎幸太郎知事は「輸出ができない中でライセンスが供与されれば生産者が大きな打撃を受ける。せめて同じ土俵で対等な競争させてほしい」。と話したとのこと。

出典:ロイター通信

元々、日本産のシャインマスカットの輸出は市場の狭さ、検疫の問題でほぼ輸出が不可能。一方で、日本から流出した苗木から生まれた海外産のシャインマスカットは検疫をすり抜け日本の1/4の価格で取引されていることから価格競争で勝てず、さらに廉価版の品質の悪さがブランドイメージを傷つけることで、日本の質の良いシャインマスカットへの需要も低下する原因になっています。こうした問題への農水省や国の対応の遅さが非難の声を浴びています。

ライセンス供与でキックバック不安視の声

シャインマスカットとは、約30年の歳月を経て2006年に品種登録されましたが、その上品な香りと食べやすさにいち早く注目した中国や韓国に無許可で苗木が持ち去られ、国内外で高額で販売されることが問題視されるようにもなりました。

海外での品種登録(育成者権の取得)をしていなかったため日本はこれを止めることができず、特に海外では日本産よりも安価で大量に流通したことで日本が本来得られたはずのライセンス料や輸出利益(農水省の試算では年間100億円以上)が失われるという大きな経済的損害が試算されています。

こうした一連の流れを受けて考えられた、ライセンス供与。ニュージーランドとの結束により日本のシャインマスカットの地位生き残りに前向きな捉え方もできますが、そのロイヤリティが正しく日本国民に還元されるのかという点においては不透明な点が多く、キックバックが目的なのではという声も上がっています。

特に日本国内の農家の海外への生産ルート開拓には検疫や設備がハードルとなるため、自由な貿易のために農水省が資金や設備の援助を行うという道もあります。農水省のそうしたサポート体制への消極的な姿勢は今後も問われていきそうです。

SNSの反応

「農水省が研究しライセンスを持ってて、ニュージーランドでは検疫が厳しく輸出できないから技術供与契約は違法栽培を防ぐ、とノート(X上の注釈アシスト)が付いたが、そこだけが問題ではないと思う。正式な種子と栽培の「技術流出」が問題であると思う」

「日本政府 「海外で栽培したほうが儲かる」 は? どこまでも日本農家を貶めたいの?」

「なんでNZ産ならOKなのに日本産はダメなのか、それはなぜ解決出来ないのか ぶどう栽培は10年計画、簡単に納得なんかしません」

「シャインマスカットの件、NZとは季節が逆なのでかぼちゃと同様年間栽培が可能になる…それはそうなんだが、主訴はそもそも日本から他国へ輸出できないので、そこを何とかしないと海外産が入ってくるだけで国産を売り込めないということなんだよ… あとスモモを勝手に輸入解禁にされたのでそこの禍根もあるよね。」