中国で50代男性を拘束 なぜ“スパイ容疑”?日本でもスパイ法を求める声

2023年3月に中国・北京で、帰国途中だったアステラス製薬の50代の日本人幹部社員が「スパイ活動の疑い」で突然拘束された件で、懲役12年の判決を言い渡されたことが明らかになりました。

このニュースは日本国内に大きな衝撃を与えましたが、なぜ一般企業の駐在員がスパイと見なされたのでしょうか。そして、日本国内でも「日本もスパイ防止法を制定すべきだ」との声が高まっています。

ニュースによると

中国上海市の裁判所は13日、2021年12月に中国当局に拘束された50代の日本人男性に対し、「スパイ活動を行った」として懲役12年の判決を言い渡した。在上海日本総領事館が明らかにした。

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 男性は上海市内で中国当局に拘束された後、22年6月に逮捕、23年8月に起訴されていた。中国の国家安全に関わる罪に問われたとみられ、この日の一審判決でスパイ行為を認定されたという。総領事館関係者が傍聴したが、判決の具体的な内容は明らかにしていない。

 判決を受け、在中国日本大使館は中国政府に対し、男性の早期釈放や司法プロセスの透明性を求める申し入れを行った。(上海=小早川遥平)

なぜ拘束されたの?背景にある中国の“反スパイ法”

今回拘束された男性は、駐在任務を終え、まもなく帰国する予定だったとされています。関係者によりますと、男性は突然現れた中国当局により車に押し込まれ、そのまま連行されたということです。中国外務省は「スパイ活動に関与した疑いがある」と説明しましたが、具体的な証拠や詳細は公表されていません。

このようなケースは過去にも起きています。6年間収監された経験のある鈴木英司さんは「ただの会話がスパイ容疑につながった」と証言しています。中国では2014年に「反スパイ法」が施行され、2023年にはその適用範囲が「国家機密」から「国家の安全や利益」にまで拡大されました。このようなあいまいな定義のもと、ビジネス関係者や民間人がスパイ容疑で拘束されるケースが増えているのです。

日本国内でも「スパイ法が必要」との声

一方で、日本国内ではこのような一方的な拘束に対し、「外交努力だけでは限界がある」との意見も出ています。SNSなどでは「日本もスパイ防止法を作るべきだ」といった声が多く見られます。現在、日本にはスパイ活動を明確に取り締まる法律が存在せず、機密漏洩などは別の法律で対応しているのが現状です。

神田外語大学の興梠一郎教授は「中国は治安維持を最優先としており、日本人だからといって例外にはならない」と指摘しています。たとえビジネスや文化交流であっても、相手国の法律やリスクを理解し、慎重に行動する必要があるということです。

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