中国最大にして世界最大級のダム「三峡ダム」の水位上昇について21日、中国の複数のメディアが「過去最大値」を記録したことを報じました。
水位が急上昇している三峡ダムの現在の状態については混乱を避ける意味合いもあってか情報が少なく、海外からも大きな注目を集めていますが、今回の報道で重要な情報も公開されました。
中国メディアから新たに公開された情報と現在の様子についてまとめます。
三峡ダムの現在(8月26日)の様子は?
現在の三峡ダムの様子はライブ映像で見ることができます。
現在(26日)時点で、ひとまずピーク(水位167m)を超え、水位はやや下がる傾向にあります。
レーダーで雨量が多い時は排出口側が映像として流れ、雨雲が切れると表側(ダム内側)へとカメラが切り替わる仕組み。
また水位の変動なども数値やグラフで可視化されおり、簡単に確認することができます。
2020年8月26日の現在の水位は163.4メートル。
2020年8月21日の現在の水位は163.4m。21日時点で166.8mだった頃に比べれば水位が下がっており、雨脚もやや弱まっていますが、依然雨量に大きな変化はなく、まだまだ危機感は続きます。
ダムの耐久性について、中国水利局の技術者は次のように話しています。
中国の水利技術者であるXu Xiaodao氏は、三峡ダムの通常の貯水レベルは175メートルであり、洪水期には、洪水の規制の必要性から、洪水制限水位は145メートルで作動するとしている。 これまでのところ、三峡は洪水期に170メートルの水位に達していません。出典:多維新聞
ダムが持つ貯水可能なレベルは175mまでで、洪水制御の必要性から、6-9月の洪水シーズン中は145mの制限で稼働するように排水をコントロールしているそう。
しかし今回はそのレベルを大幅に超えているため、排水口を開けて対応しているといいます。
最後の砦「水位調整用排水口)」が鍵握るか
ダムの高さ158mの位置にあるオーバーフローサーフェスホール(水位調整用排水口)は三峡ダムに22箇所あり、これが水位の上昇を大幅に遅らせる非常に重要な役割を果たします。
20日時点の三峡ダム
ダム下流の命運を左右するとも言えるこの排水口。先月7月末に水位上昇による越水の危険が報じられ日本で「決壊寸前」と報じられた時もこの排水口を開けることで峠を超えました。
中国当局は完成当初「1万年に1度の洪水にも耐えられる」と語ったとされていますが、この最終手段を持つことが強気の所以とも言えます。
排水口を11箇所開け水位下げる努力
現在、確認する限り11箇所の排水口を開けているとのこと。
すでに下流への放流量は毎秒7万5000立方メートルに達しており、下流の洪水は続いています。
非難を最小限に抑えるための排水とはいえ、排水口を開けることは「肉を切らせて骨を断つ」ほど、慎重な判断を迫られることでもあります。
重慶では「3階以下の住民は非難」
下流の状況について新たにわかったのは、19日にもダム上流の重慶で「3階より下のすべての人々を避難させるよう」通達があったこと。
エポックタイムズの取材に対し、旧市街の当局者が語ったと報じています。
政府の対応は?
中国の水利技術者であるXu Xiaodao氏は、ダムの決壊や崩壊の心配について現状について心配する必要がないことを伝えています。
Xu Xiaodao氏の主張の根拠は
・氾濫水位を超えるには十分な高さがある。
・ダムの頂上から溢れ出ても、三峡は短時間でダムを壊さない。
・水位が高いほど、三峡ダムの洪水排出口の能力は高まる。特別、22のオーバーフローサーフェスホールの排出能力は非常に大きく、ダムの前の水位の上昇速度を効果的に制御できる。
というもの。
なお、下流においては、ダムのおかげで安全が守られていることを強調。
ダムの決壊の心配はない=特別に緊急対応することはない姿勢を見せました。
一方で毎秒7万5千トンもの排水を受ける上流〜下流に至るまでの洪水についての被害は全容が明らかになっておらず、情報収拾と支援の確認が必要と見られます。