睡眠不足による気分の落ち込みを和らげる食べ物があった

眠れなかった翌日、頭は重く、気分はスッキリ晴れない。誰もが知る感覚だ。

ニュージーランドのオタゴ大学の研究チームが、17〜25歳の若者を対象に、睡眠・食事・運動と心の健康の関係を調べた。結果は学術誌『PLOS One』に2025年8月に掲載されている。

わかったのは、睡眠の質が心の充実度を最も強く左右するという事実だった。そしてもう一つ、少し意外な結果が続いた。野菜と果物を多めにとった人では、寝不足の日の気分の落ち込みが、いくらか和らいでいたという。

夜更かしで睡眠不足になると、気分が落ち込む

若者にとって、質の良い睡眠は当たり前のものではない。実家を離れ、学費や生活費に追われ、人間関係にも気を張る。オタゴ大学のタムリン・コナー教授は、この年代が「進学、経済的ストレス、社会的なプレッシャーといった特有の重圧」に直面し、それが幸福感を押し下げると指摘する。

眠れない夜が続けば、翌日の気分は沈む。これは経験的にも知られている。だが研究チームが確かめたかったのは、その落ち込みを、睡眠以外の生活習慣で埋め合わせられるかどうかだった。

気分の落ち込みに即効性のあるものが判明

チームは、①睡眠の質、②野菜と果物の摂取、③運動という3つの習慣と、心理的なウェルビーイング(心の充実度)の関係を調べた。使ったのは性質の異なる3つのデータだという。ニュージーランド・イギリス・アメリカの成人1,032人を対象にした調査、ニュージーランドの成人818人に13日間つけてもらった日記、そして236人がFitbitを装着して運動量を記録した8日間の調査である。

3つすべてに共通して、睡眠の質の高さが心の充実度と最も強く結びついていた。

次に強かったのが野菜と果物の摂取だったと報告されている。しかもこの二つは、同じ人の日ごとの変化で比べても効果が表れた。つまり、ある日に野菜や果物をいつもより多く食べると、その日のうちに気分が上向く傾向がみられたという。運動も心の充実度と結びついていたが、こちらは主に同じ個人の日による差として現れた。

数字そのものが習慣の力を物語っている。特別な健康法ではなく、日々の食卓と眠りの話である。

睡眠不足は後から取り返すことができるか

この研究でとりわけ目を引くのが、3つの習慣が独立して積み重なるように働いていた点だ。書く習慣を積極的に多くこなすほど、心の充実度への恩恵も大きくなる可能性がある、と研究チームは述べている。

ただし一つだけ例外があった。野菜と果物を平均より多くとった場合、寝不足の日の「心の充実度」の落ち込みが和らいでいたのだ。逆に、良い睡眠がとれた日には、野菜や果物が少なくてもその影響が抑えられていたという。片方の不足を、もう片方が部分的に補っていた。

眠れなかった夜は取り返せない。だが翌日の食卓なら、今日の自分で選べる。研究の主著者ジャック・クーパー博士は「若者は何か客観的な健康の基準に到達しなくても、心の充実度は改善しうる。いつもより少しよく眠る、少し健康的に食べる、普段より10分長く体を動かす。それだけでもその日の気分の改善と結びついていた」と語っている。

ただし、この研究には限界も

強調しておきたい点がある。この研究は生活習慣と心の充実度の関連を示したものであり、「野菜を食べたから気分が良くなった」という因果関係を証明したものではない。もともと気分の良い人が、よく眠りよく食べていた可能性も残る。

対象がイギリス・アメリカ・ニュージーランドの若者に偏っており、集団の性質も比較的そろっていた。そのためほかの国や年代でも同じ結果になるかは、これからの検証を待つ必要がある。研究チーム自身も、参加者の国や人数を広げることを今後の課題に挙げている。

今日からできる小さな一歩

それでも、この研究が差し出す視点には救いがある。心の健康を守るために、生活を完璧に整える必要はない。眠れなかった朝でも、打てる手はまだ残っている。

コナー教授は、この年代がただ「なんとかやり過ごす」のではなく、この大切な時期を「生き生きと過ごす」ために、何が支えになるかを知ってほしいと語る。

眠れなかった朝に、りんごを一つ、サラダを一皿。それだけで今日の自分は少し違うのかもしれない。

出典:EurekAlert / PLOS プレスリリースCooper JR, Turner RS, Conner TS (2025) PLOS One 20(8): e0329689