頭痛のときは冷やすか、温めるか・・迷ったことはあるだろうか?
冷やすべき状況で温めると悪化し、温めるべき状況で冷やしても改善しない上に、脳梗塞の既往がある人や血管に持病がある人は、事前に確認すべきこともある。あくまでセルフケアの範囲でだが、緊急時にはぜひ知っておきたい。
頭痛の2台要因・・緊張型頭痛(有病率22.4%)と片頭痛(有病率8.4%)を軸に、どちらかわからない場合と、持病がある場合の対処を確認してみよう。
まずは頭痛のタイプを確認
頭痛は大きく2種類に分かれる。頭痛そのものが病気の場合に起きるものと、別の病気が原因の時に起きるものだ。これを先に理解しておくと、冷やすか温めるかの判断が格段にしやすくなる。
一次性頭痛——頭痛そのものが病気
片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛がこれにあたる。命に直結するものではないが、繰り返す慢性的な頭痛の大半はここに含まれる。
二次性頭痛——別の病気が原因
脳梗塞・脳出血・くも膜下出血・脳腫瘍などが背景にある頭痛。見逃すと命に関わる。「いつもと違う」「突然の激痛」「他の症状を伴う」が判断の鍵になる。
冷やすか温めるかは「一次性頭痛の話」だ。二次性頭痛が疑われる場合は、冷温どちらでもなく、まず速やかな救急受診が優先される。
緊張型頭痛のとき——「温める」が正解
日本人の約4〜5人に1人が経験するとされる緊張型頭痛は、首・肩・後頭部の筋肉が緊張して血流が滞ることで起きる。締め付けられるような重い痛みが特徴だ。
緊張型頭痛は次のような症状が当てはまる。
頭全体または後頭部が「ギューっと締め付けられる」ような痛み
動いても痛みが変わらない、または少し楽になることがある
長時間のデスクワーク・スマホ・ストレスの後に起きやすい
肩こり・首こりを伴っていることが多い
吐き気や光・音への過敏は少ない(不快に感じない)
温め方と、温める場所は?
- 蒸しタオルまたは温熱シートを「首の後ろ側」に当てる——筋肉の緊張をほぐして血流を促すのが目的だ
- 入浴は有効。ただしのぼせない程度のぬるめの湯(38〜40℃)に首まで浸かる方法が推奨される
- 肩回し・ゆっくりとした首のストレッチを組み合わせると効果が高まる
- 温める時間は15〜20分を目安にする
緊張型頭痛に入浴が効く理由と注意点
体が温まると心拍数が上がり血流が増える。このとき首の筋肉の血流も改善されて頭痛が和らぐ。ただし首こりが強い状態で急に全身を温めると、充血して逆に痛みが出ることがある。そのような場合は首の後ろを温めながら入浴するとよいとされている。
広告片頭痛のとき——「冷やす」が正解、ただし場所に注意
片頭痛は脳の血管が拡張し、神経が刺激されてCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質が放出されることで起きる。ズキズキと脈打つような痛みが特徴で、温めると血管がさらに拡張して悪化する可能性がある。
片頭痛は次のような症状が当てはまる。
こめかみ・頭の片側がズキズキと脈打つような痛み(両側に広がることもある)
動くと痛みが増す、階段の上り下りで悪化する
吐き気・光への過敏・音への過敏を伴うことがある
痛みの前に視野にギザギザした光(閃輝暗点)が見えることがある
月に数回、決まったトリガー(睡眠変化・ストレス・特定の食品など)の後に起きやすい
冷やし方と、冷やす場所は?
片頭痛の際は首の前側にある頸動脈を冷やすと良い。頸動脈は心臓から脳へ血液を送る太い血管で、ここを冷やすことで脳に届く血液の温度が下がり、血管拡張を抑制できる。
- 保冷剤をタオルで包み、喉ぼとけの両脇(頸動脈の位置)に当てる・・タオル越しに当て15〜20分、冷やしすぎは逆効果になるため注意。
- 暗くて静かな場所で横になると、光・音の刺激が遮断されて回復しやすい
- 片頭痛中の入浴は血管拡張を促すため避ける
ここで注意したいのは「首の後ろは冷やさない」ことだ。
片頭痛の人は首こりを併発していることが多い。そのため「首を冷やす」と、首の冷えが刺激となってさらに悪化することがある。片頭痛のときに冷やすのは「首の前側(頸動脈)」であり、「首の後ろ」ではない。前後で真逆の対処になる点は混乱しやすいので注意が必要だ。
どちらかわからないとき——判断のための2つの問い
「締め付けられる感じ」か「ズキズキ脈打つ感じ」かが判断の基本だが、実際には混合しているケースもある。そのときは次の2つを確認する。
問い①:動くと悪化するか
階段を上る、早足で歩くなど、体を動かしたときに頭痛が強くなる場合は片頭痛の可能性が高い(冷やす方向)。動いても変化しない、または少し楽になる場合は緊張型頭痛の可能性が高い(温める方向)。
問い②:吐き気・光・音への過敏はあるか
これらがある場合は片頭痛の可能性が高い。ない場合は緊張型頭痛の可能性が高い。
どちらかわからない場合の現実的な対処
迷ったときはまず「安静・遮光・水分補給」から始める。これはどちらの頭痛にも共通して有害ではない。その後、冷温どちらかを少量試して反応を見る。冷やして悪化したなら緊張型の可能性が高く、温めて悪化したなら片頭痛の可能性が高い。
脳梗塞の既往がある人・血管に持病がある人の場合
もし脳梗塞を経験したことがある人、動脈硬化・血管狭窄・高血圧などの持病がある人であれば、頭痛の対処の前に「これは普通の頭痛か」を確認する必要がある。
脳梗塞患者の約3割が頭痛を感じると言われており、脳梗塞による頭痛は特徴がある。FASTチェックと呼ばれる以下の項目のうち、いずれかがある場合は迷わずに救急車か人を呼び、一緒に医療機関を訪ねて欲しい。
FASTチェック——この症状があれば即救急へ
F:Face(顔)——「イー」と言わせたとき顔が左右非対称になる、片側が下がる
A:Arms(腕)——両腕を前に出したとき、片方だけ下がってくる
S:Speech(言葉)——言葉がうまく出ない、ろれつが回らない
T:Time(時間)——上記のひとつでも当てはまったら、すぐに救急車を呼ぶ
発症から4時間半以内に血栓を溶かす治療が開始できれば、後遺症を大幅に抑えられる可能性がある。我慢しがちな人は特に、脳梗塞の治療は「時間が命」ということを思い出してほしい。
FASTに該当しない「いつもの頭痛」が来たとき
持病があっても、普段から繰り返している「いつものパターン」と同じ頭痛であれば、一次性頭痛として対処することができる。ただし次の点に注意が必要だ。
- 強く冷やしすぎない。血管が過収縮すると、血流が悪化して脳への血液供給が減るリスクがある。タオル越しに短時間当てる程度にとどめる
- 強く温めすぎない。血圧が高い人は、急激に体を温めると血圧が上昇しやすい。ぬるめ・短時間が原則だ
- 市販の頭痛薬を長期・多用しない。血管に持病がある場合、薬の選択に注意が必要なことがある。かかりつけ医に「頭痛のときに使ってよい薬」を事前に確認しておくのが理想だ
- 「いつもより強い」「いつもと違う」頭痛が来たときは、持病があっても市販薬で対処せず受診する。
後頭部・うなじの片側の痛みには特別な注意が必要
首の後ろから後頭部にかけての片側の痛みは「椎骨動脈解離」の可能性がある。椎骨動脈は脳への主要な血管のひとつで、解離(引き裂かれること)が起きると脳梗塞やくも膜下出血につながることがある。この痛みは緊張型頭痛や後頭神経痛と区別が難しく、医師の診断が必要だ。
後頭部・うなじの片側が突然痛み始めた場合は、自己判断で温めたり冷やしたりせず、早めに受診してほしい。
まとめ——頭痛のときどうするか
頭痛のケース別でみてきたが、要約すると以下のようになるので、いざという時に役立てて欲しい。
- 締め付けられる・重い痛み(緊張型頭痛)→ 温める。首の後ろ・肩を蒸しタオルやぬるめの入浴で温める
- ズキズキ脈打つ痛み(片頭痛)→ 冷やす。場所は「首の前側(頸動脈)」が有効。おでこより効く
- 片頭痛のときに「首の後ろ」は冷やさない。悪化することがある
- どちらかわからないとき→ まず安静・遮光・水分補給。その後に冷温を少量試して反応を見る
- 脳梗塞の既往・血管の持病がある人→ まずFASTチェック。該当すれば即119番
- 持病がある人の「いつもの頭痛」→ 冷温どちらも強くやりすぎない。ぬるめ・タオル越し・短時間が原則
- 後頭部・うなじの片側が突然痛む→ 自己判断せず受診。椎骨動脈解離の可能性がある
- 「いつもと違う」「これまでで最悪の痛み」→ 冷温より先に受診か救急。
参考資料・出典
日本頭痛学会「慢性頭痛の診療ガイドライン2021」
なかめぐろ脳神経外科・内科 頭痛クリニック「頭痛の対処法——冷やす?温める?」
しろうず脳神経外科「頭痛は冷やす方がいい?温める方がいい?」(2025年)
スマート脳ドック「こわい/こわくない頭痛の分類」
西湘病院「頭痛は脳卒中の前兆のことも」
脳神経リハビリセンター「脳梗塞と頭痛の関係」
いわた脳神経外科「脳梗塞の予兆を見逃さないで!FASTチェック」
澤井製薬・サワイ健康推進課「頭痛の原因と症状をチェック」(飯ヶ谷美峰先生監修)
厚生労働省 e-ヘルスネット「頭痛」
本記事は医療機関・学術文献をもとに構成しています。持病がある方は担当医にご相談ください。















