片頭痛を早く治める方法は?薬が飲めない時にも素早く痛みをとる方法は

ストレスやホルモンの影響、低気圧、複合的な原因で起こる片頭痛(偏頭痛)。有病率は8.4%、その中でも視界が欠けるなどの予兆を伴い、その後嘔吐・激しい頭痛を伴う人の有病率は約2.6%だ。一時的に日常生活がままならなくなる場合があり、想像以上に厄介な頭痛だ。

片頭痛には専用の薬もあるが、できることなら時短で早く治めたい。セルフでできる対処法を整理してみよう。

そもそも片頭痛はなぜ痛いのか

偏頭痛が起きるとき、脳の血管は「拡張」している。脳に分布する三叉神経が何らかの刺激を受けると、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質が神経末端から放出される。このCGRPが血管をぐっと拡張させ、拡張した血管の周囲に炎症を起こすことで、あのズキズキとした拍動性の痛みが生まれる。

ひと言でいうと

偏頭痛中の脳の血管は「膨らんで炎症を起こしている」状態だ。膨らんだものを収縮させるには「冷やす」が有効で、「温める」とさらに膨らんで悪化する可能性がある。

最新の片頭痛治療薬(抗CGRP抗体薬)が「CGRPの働きをブロックする」仕組みで開発されているのも、このメカニズムが根拠になっている。「冷やして血管を収縮させる」という民間療法は、現代の医学的な治療の発想と同じ方向を向いているわけだ。

片頭痛を早く治すには?薬が飲めない時でも痛みを素早く取るには

偏頭痛は痛みが出た直後に専用の薬を飲むことが推奨されている。前兆がある場合はその時に、なすべく早く、というのが医師の勧める対応だ。その後は安静にする、というのが一般的な対処法だが、日常生活を送る上ではそうもいっていられない場合がある。

「冷やす」ことで痛みの軽減が期待できる。片頭痛は光や音の刺激も受けやすいので光を遮断する意味でおでこや目元に貼るのも良いが、痛みの原因にアプローチするためには頸動脈を冷やすのが最も有効だ。

首の前側を冷やすことで脳の血管にアプローチする

頸動脈は心臓から脳へ血液を送る太い血管で、喉ぼとけの両脇に位置している。ここを冷やすと、脳に届く血液の温度が下がり、脳内の血管拡張を抑制する効果が期待できる。

最大限の効果を発揮するためには以下に注意してほしい。

  • 保冷剤をタオルで包み、首の前側の両脇(喉ぼとけの左右)にあてる
  • 冷やしすぎると血管が過収縮して逆効果になるため、タオル越しに当てるのが基本だ
  • 1回あたり15〜20分を目安にする
  • おでこや頭全体を冷やすより、首の前側を優先する

薬がないときの応急処置は

外出先で偏頭痛が始まり、薬も保冷剤もない場合は、コンビニで冷たい缶コーヒーを2本買い、喉ぼとけの両脇に当てると楽になるかもしれない。頭痛の間はできるだけ安静にすることも大切だ。

この方法は、冷たい缶で頸動脈を冷やすことで脳の血管拡張を抑えつつ、コーヒーに含まれるカフェインが血管を収縮させる作用が、さらに砂糖入りを選ぶことで、脳血管を拡張させやすい低血糖状態を緩和する効果も期待できる。

冷却・カフェイン・血糖値の三つが同時に働く、即席ながらも理に適った対処法と言える。

カフェインに血管収縮作用があることは広く知られており、それが市販の頭痛薬にカフェインが配合されている理由のひとつでもある。ただしカフェインの過剰摂取は逆効果になる場合もあるため、あくまで「その場しのぎ」の手段として位置づけたい。

もし緊張型頭痛を併発したら「温める」ほうが良い

一つ合わせて覚えておきたいのは、「温める」が有効なケースも存在することだ。温めは、偏頭痛ではなく、緊張型頭痛の場合に必要になる。

片頭痛と緊張型頭痛には次のような違いがある。

偏頭痛:脳の血管が拡張・炎症を起こしている状態。ズキズキと脈打つような痛み。動くと悪化する。光や音に敏感になる。→冷やすと良い

緊張型頭痛 :首・肩の筋肉が緊張して血流が悪化している状態。締め付けられるような鈍い痛み。動いても悪化しない。→温めると良い

緊張型頭痛は肩や首の筋肉が収縮して血流が滞ることで起きる。この場合は筋肉をほぐして血流を促す「温める」が有効だ。蒸しタオルを首の後ろに当てる、湯船に浸かるといった対処が理にかなっている。

問題は、偏頭痛を持つ人の約8割が緊張型頭痛を併発しているとされている点だ。

「首の前側を冷やしながら、首の後ろ側を温める」という一見矛盾した対処が必要になる場合がある。首の前後で冷温が逆になるというのは感覚的にはわかりにくいが、解剖学的に見れば理にかなっているという。

自分の頭痛が「どちらか」を確かめる簡単な方法

どっちが偏頭痛で緊張型なのかわからない場合は、以下を参考にしてほしい。

階段を上ったり歩いたりすると悪化する、痛みがズキズキと脈打つように感じるなら偏頭痛の可能性が高い(冷やす)
動いても変わらないが、締め付けられるような重い感覚なら緊張型の可能性が高い(温める)

ただし自己判断には限界があるため、頻繁に繰り返す場合は頭痛外来への受診が勧められる。

偏頭痛持ちが日常でできる予防のポイント

発作を和らげる対処法と同じくらい重要なのが、発作を起こさないための予防だ。偏頭痛の引き金は人によって異なるが、共通して報告が多いものがある。

避けた方がよい習慣

  • 睡眠の乱れ(寝すぎ・寝不足どちらも引き金になる)
  • 急激な気圧の変化(雨の前日に頭痛が出る人はこのタイプが多い)
  • 強い光・点滅する光・画面の見すぎ
  • 空腹・食事を抜くこと(低血糖が引き金になる)
  • 赤ワイン・チョコレート・チーズ(チラミンという成分が関与するとされる)
  • 強いにおい・香水
  • ストレスの直後よりも「緊張が解けたとき」に発症しやすい点に注意

継続すると効果があるとされる習慣

  • 毎日同じ時間に寝起きする(週末も崩さない)
  • 水分をこまめに取る(脱水は強力なトリガーだ)
  • 首・肩のストレッチを日常に取り入れる(緊張型の併発を減らす)
  • 発作の日時・前兆・食事・天気を記録する「頭痛日記」をつける

頭痛日記は市販アプリでも管理でき、自分の片頭痛の傾向を特定する上で最も実用的な手段だ。受診の際に持参すると医師の診断材料にもなる。

片頭痛はとても辛いが、生活習慣や環境の変化でいつの間にか頻度が減ったり、起こらなくなっていく場合もある。できるだけ原因となるものや習慣から離れていくことも意識しながら、もし辛いときはこれらの対処法を行ってみてほしい。


参考資料・出典
日本頭痛学会「慢性頭痛の診療ガイドライン 2021」
Al-Karagholi MA-M et al. (2023) The vascular role of CGRP: a systematic review of human studies. Frontiers in Neurology, 14:1204734.
Carter SC et al. (2024) Effect of CGRP inhibitors on interictal cerebral hemodynamics in individuals with migraine. Frontiers in Neurology, 15:1399792.
大正製薬「夏の片頭痛の原因と予防・対処法」
大清水クリニック「頭痛は冷やす・温める?どっちが正解?専門医が解説」(2022)

本記事は学術文献・医療機関の公開情報をもとに構成しています。症状が重い場合は頭痛外来・神経内科を受診してください。