ジョギングすると視力が上がる?ブレインフォグにも効果、頭が回復すると話題に

Xで人気の作家・望月もちぎさんがSNSで「マラソン始めてから頭が回復してる。理由は不明。」と投稿した内容が共感を呼び、話が派生して「走ると目が良くなる感覚まである」と話題となっている。

これは俺も感じた。明らかに視界がシャキッとするし世界の彩度があがった笑

これ高校の体育の時間に思った。長距離走ったあとはやけに視界がくっきり鮮明に見えるから感動した記憶ある。走ることによって隅々まで酸素が行き渡るようになるから?返信より

自転車通勤始めてから数年で視力上がって眼鏡が合わなくなって買い替えたので、そうゆうこともあるのかなと思ってる

「遠くを見るから?」「酸素が行き渡るからなのか?」という声も多く見られた。気のせいで片付けるには、あまりに同じ経験をしている人が多い。

結論から言うと理論上は「視力の数値が上がる」ことはないものの、脳のスッキリや視界の改善は科学的に説明ができることがわかった。

ジョギングすると頭がリフレッシュする理由

ジョギングをしたら「脳が回復」という感覚を共有したり再現するのは難しいが、「視界がくっきりした」感覚であれば、眼圧の低下・血流の改善・筋肉の緩み、この3つで説明ができ、同様の効果を得ることが期待できそうだ。

まずジョギングと視界の回復の関係を一つ一つ見てみよう。

眼圧が下がる

眼球の内部には「房水」と呼ばれる液体が満たされており、その圧力(眼圧)が高くなりすぎると視神経がダメージを受ける。よく耳にする緑内障は、これが主な原因として知られている。

有酸素運動はこの眼圧を下げることが複数の研究で確認されている。20分の有酸素運動後に眼圧が約2.7mmHg低下し、その効果が約1時間続くというデータがある。眼圧が下がると視神経への圧迫が和らぎ、視野のすっきり感につながる可能性があるとされている。

走り終わったあとに「なんか見えやすい」と感じるタイミングが、この眼圧低下の時間帯と重なっているとしたら、合点がいく。

網膜の血流が増える

網膜は、カメラでいえばフィルムにあたる部分。目に入った情報をここで受け取り、視神経を通じて脳に送る。この網膜は、非常に代謝が活発な組織で、酸素の消費量が体の中でもトップクラスとされている。

中程度の有酸素運動を継続すると、網膜の血管径が改善し、血流量が増えるというメタ分析が2022年に報告されている。「酸素が隅々まで行き渡るから」という直感的な説明は、網膜の話に限っていえばかなり正確だ。

血流が改善すると視細胞の働きが活性化し、コントラスト感度(明暗の差を識別する能力)や色の鮮やかさの知覚が上がる可能性がある。Xの投稿に見られた「世界の彩度があがった」という表現は、おそらくこれに近い現象を指しているだろう。

毛様体筋の緊張がほぐれる

目のピントを調節しているのは、眼球の内側にある「毛様体筋」という筋肉だ。

近くを長時間見続けると、この筋肉が収縮したままの状態が続き、遠くにピントを合わせにくくなる。スマホやパソコンを長時間使ったあとに遠くがぼやけて見えるのは、毛様体筋の疲労によるものだ。

屋外を歩いたり走ったりすると、自然に遠くの景色を見る機会が増える。遠くを見るとき毛様体筋は弛緩するため、この「遠くを見る時間」が筋肉の緊張をほぐすストレッチとして機能する。屋外での運動時間と近視の進行抑制の関連については、京都大学が関わったコクランレビュー(2024年)でも言及されている。

以上のような理由で、ジョギング(中程度の有酸素運動)は視界や頭がスッキリした感覚を届けてくれるのだ。

脳が回復する感覚、ブレインフォグの改善も

そして、走ったあとに「頭が回復する感覚」についても、 科学的な説明がつきつつある。

有酸素運動はBDNF(脳由来神経栄養因子)の 分泌を促すことが複数の研究で示されており、 これが前頭前野の働きを活性化させ、集中力・ 思考のクリアさに影響するとされている。 「ブレインフォグ」と呼ばれる思考のもやがかかった 状態の改善に、有酸素運動が有効だという 報告も増えている。

今後さらに研究が進めば思考作業がより楽になっていくかも知れない。

ジョギングすると視力は上がるのか

では「視力の数値」は上がるのか?というと、実際に視力が上がったという情報はX上の投稿には見られるものの、まだ科学的には立証されていないようだ。

視力検査で測る数値(屈折値)は、眼球の形そのものが決める。近視であれば眼球の奥行きが長すぎることが原因であり、運動でその形が変わる可能性は、成人においては現時点で科学的に確認されていない。

自転車通勤を始めてから眼鏡が合わなくなったという体験談は興味深いが、加齢による調節力の変化や、生活習慣全体の改善が影響した可能性もある。「運動だけで近視の度数が下がった」と断言できる根拠は、成人を対象とした研究ではまだ揃っていない。

ただし「悪化を抑える」という方向では、運動と視覚の関係を支持するデータは着実に増えている。SNSで語られている「視界がよくなった感覚」は、視力の数値の変化ではなく、目のコンディションが整った状態——眼圧・血流・筋肉の疲労という3つの変数が、一時的あるいは継続的に改善した結果だと考えるのが現時点では妥当とみられる。

体に負担をかけられない人でも視界を回復する方法は

心疾患など持病がある場合、激しい運動は選べない。しかし視覚への効果という観点では、運動の「強度」より「屋外であること」と「継続性」の方が重要だとされている。

ゆっくり歩くだけでも眼圧は下がる

眼圧の低下効果は、激しい運動だけに現れるわけではない。短い距離を早足で歩いた場合でも、臨床的に意味のある眼圧低下が得られたという報告がある(Hamilton-Maxwell & Feeney, 2012)。心拍数を大きく上げなくても、体を動かすこと自体に効果があるとされている。

歩けなくても「遠くを眺める」だけで変わる

体を動かすことが難しい状況であっても、屋外で遠くを眺める時間を作るだけで毛様体筋の緊張はほぐれる。窓際に座って遠景を5〜10分眺める、ベランダで空を見るといった行動でも、近距離作業で固まった目の筋肉をゆるめる効果が期待できる。

心疾患がある場合の注意点

運動強度については必ず主治医に相談してほしい。ここで紹介した内容は視覚への影響に関する話であり、心臓への負荷については個人の状態によって大きく異なる。「目のために少し歩こう」という動機であっても、運動の開始前には医師への確認が必要だ。

参考資料・出典
Zhang Y, et al. (2024) Effects and potential mechanisms of exercise and physical activity on eye health and ocular diseases. Frontiers in Medicine.
Hamilton-Maxwell KE, Feeney LJ. (2012) Walking for a short distance at a brisk pace reduces intraocular pressure by a clinically significant amount. Journal of Glaucoma, 21, 421–425.
Sidoti M, et al. (2025) The impact of different forms of exercise on intraocular pressure, blood flow, and the risk for primary open angle glaucoma. European Journal of Ophthalmology.
Kido A, Miyake M, Watanabe N. (2024) Interventions to increase time spent outdoors for preventing incidence and progression of myopia in children. Cochrane Database of Systematic Reviews.
Babaei M, et al. (2024) Meta-analysis of aerobic, resistance, and isometric exercise effects on visual acuity and eye health in the elderly. New Approaches in Exercise Physiology, 6(11).
出典ポスト:x.com/omoti194(2025年)