VRゴーグルを装着すれば、自宅にいながら異世界を歩ける。メタバースでは仮想の街に友人と集い、働き、遊ぶことも現実になりました。テクノロジーの進化は「もう一つの世界」を私たちの日常に届けつつあります。
しかしこうした革新の中で「私たちが今いるこの世界こそ、誰かが作った仮想現実なのではないか?」と考える人もいます。
この問いを真剣に、物理学の言葉で追いかけているのが、イギリス・ポーツマス大学のメルビン・M・ヴォプソン准教授。
「宇宙はプログラムされている」英学者の論文が話題に
ヴォプソン博士が研究するのは「情報物理学」。物質でもエネルギーでもなく、宇宙の本質は「情報(データ)」であるという視点です。

2022〜2023年には「情報力学の第二法則(Second Law of Infodynamics)」を提唱。そして2024年、米国物理学協会(AIP)の学術誌『AIP Advances』に衝撃的な論文を発表しました。
「重力は、宇宙が情報を整理・圧縮しようとするプロセスで生まれた副産物ではないか」──私たちを地面に引きつけるあの力が、宇宙規模の”データ最適化”の結果だというのです。
博士はこう続けます。宇宙は常にデータを極限まで効率化しようとする性質を持っており、その挙動はまるで優れたプログラマーが書いたコードのように無駄がない。これこそが、宇宙がコンピューターシミュレーションである「サイン」ではないか、と。
この論文、査読済み論文であり、専門分野の第三者(専門家)による厳密な審査を受け、学術的な妥当性や新規性が認められています。
イーロン・マスクも「現実が作られた世界」説に興味
この仮説、実は著名人も以前から語っていた。2016年のテクノロジーカンファレンス「Code Conference」で、イーロン・マスク氏はこう発言しています。
「私たちが本物の現実に生きている確率は、数十億分の一にすぎないだろう。40年前は『ポン』だったゲームが、今や写真のようにリアルになった。未来の文明が無数のシミュレーションを走らせているなら、私たちがその中の一つである可能性の方がはるかに高い」
この考えの源流は、2003年にオックスフォード大学の哲学者ニック・ボストロム教授が発表した「シミュレーション論法」だ。「人類は絶滅するか、シミュレーションを作らないか、すでにシミュレーションの中にいるか」──この三択のどれかは必ず正しいと彼は論じました。
ヴォプソン博士は、この哲学的な問いに対して物理学の数式で答えようとしている点で異色の存在です。マスク氏が「確率論」から攻めたとすれば、博士は「現実の物理法則そのもの」の中に証拠を探していると言えます。
ただし、科学界の主流はこの説に冷ややか。「宇宙全体を素粒子レベルでシミュレーションするには、宇宙の総エネルギーをはるかに超えるエネルギーが必要で物理的に不可能」という反論や、「博士が示す現象は従来の熱力学・量子力学で十分説明できる」という指摘も多いのです。この説が将来的に深く研究され続けるかは、現時点では未知数です。
もし本当にそうなら、あなたはどう感じる?
科学的に証明も反証もされていない以上、この問いは今のところ「哲学とSFの境界線」にあるただの仮説に過ぎません。しかし、世界中の人々がこの仮説に対して真剣に反応しています。
「もし私たちがシミュレーションの中にいるとしたら、証拠を見つけているのはあなたではなく、作成者があなたにそれを与えているだけだ。どうせ私たちは真相を解明できないだろう」
「コーランにはこの世界は幻想であり、すぐに過ぎ去ると書かれている。デジャヴュや夢の奇妙さを考えると、私たちは何か人工的なものの中にいると思う」
「宇宙は偶然ではなく、絶対的な命令によって創造されたのだ。すべては人類のために創られた」
もし今見ているこの画面も、感じているこの感情も、すべてが誰かのコードで動いているとしたら──あなたはどう感じるでしょうか。
















