暑さに強い身体はつくれる?6月に熱中症が増える理由と「暑さへの順応」

「熱中症に気をつけるのは7月から。」

そんな感覚を持っている人は少なくないでしょう。

しかし、その常識は変わりつつあります。

2025年は、梅雨明け前の6月に熱中症による救急搬送者数が過去最多となりました。真夏ではなく、「まだ夏ではない」と感じていた時期に、多くの人が倒れたのです。

なぜ、真夏より前の6月なのでしょうか。実は、その理由は気温だけではありません。

体がまだ暑さに慣れていないことも大きく関係していると考えられています。

そして、この「暑さへの慣れ」は、完全に体質を変えられるわけではないものの、日々の生活習慣によって後天的に高められることがわかっています。

本記事では、6月に熱中症が増える理由と、暑さに負けにくい体をつくる「暑熱順化(しょねつじゅんか)」についてわかりやすく解説します。

真夏の7月より危険だったのは6月

消防庁によると、2025年5~9月に熱中症で救急搬送された人は全国で10万人を超え、統計開始以来、初めて10万人を突破しました。

特に目立ったのが6月です。救急搬送者数は17,229人と、月別で過去最多を記録しました。例年なら本格的な暑さは7月以降という印象がありますが、実際には「夏の入り口」が最も危険な時期になっていたのです。

日本気象協会の調査でも、「熱中症に注意する時期」として6月後半を挙げる人は増えていました。一方で、4月や5月から意識している人はまだ少なく、暑さが早まる変化に備えが追いついていない現状もうかがえます。

問題は暑さではなく、「慣れていない体」

同じ30℃でも、つらく感じる日と、それほど苦にならない日があります。

この違いを生むのが、体の「暑さへの順応」です。

人の体は暑くなると、汗をかいたり皮膚の血流を増やしたりして、体内の熱を外へ逃がします。しかし冬から春にかけては、その働きは弱くなっています。

そこへ急に暑い日が続くと、熱を逃がす準備が整わず、体温が上がりやすくなります。

つまり6月の熱中症は、「気温が高すぎるから」だけではなく、「体がまだ夏仕様になっていないから」起こりやすいのです。

暑さに強い体は、本当につくれるのか

この暑さへの慣れは、専門用語では「暑熱順化(しょねつじゅんか)」と呼ばれます。仕組みは意外とシンプルです。

少しずつ汗をかく生活を続けると、体は次第に汗をかきやすくなり、熱を逃がす働きも高まります。一般的には数日〜2週間ほどで、発汗作用向上などの変化が現れるとされています。

ただし、一度身につけば終わりではありません。

涼しい環境で長く過ごしたり、体調を崩して運動を休んだりすると、その順応は徐々に失われます。暑さへの慣れは「維持する力」であり、「一生続く体質」ではないのです。

激しい運動は必要ない

暑さへの順応と聞くと、運動を始めなければならないと思うかもしれません。しかし多くの場合は日常生活の中で十分です。

例えば、

  • 湯船にゆっくり浸かる
  • 一駅手前から歩く(約10分)
  • 階段を使う
  • 30分ほど散歩する

「本当にこれだけで?」と思うかもしれません。こうした習慣でも、汗をかく機会は増やせます。

大切なのは、「頑張ること」ではなく、「少しずつ続けること」です。

当日にできる対策で、熱中症予防を強化

暑さへの順応だけでは、防げない熱中症もあります。

近年は、外出前に体をあらかじめ冷やす「プレクーリング」という考え方も注目されています。

冷たい飲み物を飲む、首や脇を保冷剤で冷やすといった方法は、体温の上昇を抑える助けになるとされています。

もちろん、水分や塩分をこまめに補給すること、無理をしないこと、エアコンを適切に使うことも大切です。

水分や塩分は、のどが渇く前からこまめに補給しましょう。汗の量が増えれば、その分だけ体から失われます。アルコールやカフェインの多い飲み物は、かえって水分を出してしまうため、暑い日の補給には向かないとされます。

暑さへの順応は、あくまで熱中症対策の一つです。他の対策と組み合わせてこそ効果を発揮します。

暑さへの備えは、6月より前から始まっている

ただし、暑さへの順応力は毎年リセットされます。去年の夏を元気に過ごせたとしても、その経験だけで今年の暑さに耐えられる、とはならないのです。

そのため暑くなってから慌てるのではなく、暑くなる少し前から体を慣らしておくことが大切です。毎日の入浴や散歩といった小さな習慣の積み重ねが、真夏の体調を左右することがあります。

暑さに強い人は、生まれつき決まっているわけではありません。

暑くなる少し前から、体を少しずつ慣らしてきた人ほど、夏の暑さに対応しやすくなると考えられています。

毎日の入浴や散歩など、小さな習慣でも十分です。本格的な暑さが来る前に、体にも「夏支度」を始める。その少しの準備が、今年の夏を元気に乗り切る力になるかもしれません。

出典:消防庁 令和7年確定値: https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/r7/heatstroke_nenpou_r7.pdf

総務省 報道資料: https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01shoubo01_02001124.html

厚労省 ガイドライン策定: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_71721.html

厚労省 ガイドライン本文PDF: https://www.mhlw.go.jp/content/001676299.pdf

気象協会「熱中症ゼロへ」: https://www.netsuzero.jp/news/news-zero/20251120-14915.html

環境省 熱中症予防情報サイト: https://www.wbgt.env.go.jp/