カズワン曳航は難しい?落下原因は想定の範囲内も「潮の流れ」想像以上か

2022年4月23日に知床沖で沈没した知床観光船「KAZU1(カズワン)」。

24日に何らかの原因で水深182mに落下、再び船の引き揚げ作業に入ることが分かりました。順調に進めば26日にも引き揚げ作業に入る見込みでしたが、船体が水面からもぼんやり見えていただけに落胆の声も聞かれます。

前回以上に深い水深への落下で、作業自体はより難度の高いものに。さらに落下の原因とも見られている想像以上の潮の流れが作業を阻む様子が浮かび上がってきました。

カズワン曳航は難しい?

26名の尊い命が失われた知床観光船事故。事故検証のための唯一の物的証拠が「KAZU1(カズワン)」だと言います。事故の原因究明と、責任者の罪を明らかにするためにも重要なカズワンの船体。

カズワンは今月23日、九州市から派遣された民間作業船「海進」により、クレーンなどを使った引き揚げ作業が行われました。

海底20mまで引き揚げられた船体を傷つけない様に慎重にベルトで固定された後、海の状態を見ながら海底の浅い斜里町沖合を目指して時速0.7kmの速度でゆっくりと曳航。

万一船が落下しても再度引き上げられる様、水深の浅い海域、斜里沖を目指して船体を移動させていましたが、結果的に前回の水深115mよりもさらに深い182mに落下。

海上保安庁によりますと無人潜水機で確認したところ、カズワンはウトロ漁港の西11キロ地点の水深約182メートルの海底に船底を下にして沈んでいて、船体に大きな損傷は確認されていないということです。

カズワンの曳航は多くの人の想像以上に難航している様です。

その鍵となっているのが、どうやらベルトと潮の流れの様。

今回の落下の原因は

・このベルトから船体が滑り落ちたか、

・バルト自体が作業船から外れて、ベルトごと落ちた

・ベルトが千切れた

のいずれかであると考えられていましたが、その後の調べで、ベルトが「千切れていた」とこがわかりました。

作業船員の話によると「気づいたらなかった」として、原因の特定も未だ明らかとなっていません。

外洋である周辺海域は当日潮の流れが早く、地元漁師らが警戒し沖から戻っていました。テレ朝の取材によれば

地元漁師:「曳航している方向に(潮が)向かっている感じ。潮に向かっているようなスタイルになっていると思う。その辺は考えて曳航していたと思うが、それ以上に潮の影響があったのでは」

出典:テレ朝ニュース「曳航中の「KAZU1」水深182mに落下…「知床遊覧船」事業認可取り消しへ」

とも。

24日の落下後も、このベルトを使って船体を吊り上げ、再び斜里町沖合を目指して曳航する予定です。

落下原因は想定の範囲内も「潮の流れ」想像以上か

ところで、今回の様な曳航中の船体の落下は珍しいのでしょうか。

日本水難救済会常務理事の遠山純司さんはANNニュースの解説中で”曳航のポイント”を述べる際

「最悪、スリングのベルトから船体が途中からずり落ちない様に、確実にそれを捕縛する必要がある」とコメント。(出典:沈没の観光船 なぜ引き揚げずに曳航? 事故原因どう究明? 専門家が解説

可能性の一つとして、固定の不足により船体がベルトからずり落ちることが予想されており、今回の落下トラブルも、ある意味では想定の範囲内であったと言えそうです。

また、水深が深く船体が錨で固定できない状況にあることもベルトと船の固定状態を不安定なものにする要素として考えられそう。

一方、落下原因の究明に伴い、作業員が曳航中の「カズワン」船体を注視していなかったことが、少なからず問題視されています。

テレ朝newsは「事故は防げたのではないか。」と記事の中で疑問を投げかける記事を発表。

Twitterではこの落下事故に対し、「やっぱ九州と北海道の海や潮の流れが違うからかなぁ~」「引き上げ業者は九州からだから… 北海道流れがわかって無かったのかも…」と、業者の得意とする現場でなかったことも理由の一つとして考える声も上がっています。