フッ酸で生還した人が語る「怖さ」 外傷ないと言われ、自分の判断で命を左右することも

「フッ酸は危険らしい」

過去の事故報道などから、そんなイメージを持っている人は多いかもしれません。

では、実際に触れてしまったらどうなるのか。そして、そこから生還するには何が必要なのでしょうか。

意外にも、フッ酸(フッ化水素酸)は「強酸」ではありません。それでも人体にとって非常に危険なのは、皮膚の表面だけを傷つけるのではなく、組織の深部まで入り込んで影響を及ぼす性質があるためです。

さらに厄介なのが、見た目では深刻さが分からないことがあること。

そんなフッ酸事故を実際に経験した人物の体験談が、SNSで注目を集めています。

「外傷ないので緊急ではない」――最初の病院で言われた言葉

投稿者は、自身もフッ酸事故を経験したとして、事故の詳細は明かさない形で当時の出来事を振り返りました。

事故後、まず上位者から言われたのは、

「フッ化水素酸って弱酸だよね、大丈夫」

という言葉だったといいます。

夜間だったこともあり、投稿者は救急を受診。

ところが、そこで医師から「外傷がない」「何も問題ない」という趣旨の判断を受けたと振り返っています。

画像:Pixels

これに対し、フッ酸の怖さを知っていた投稿者は納得せず、自ら#7119に電話。

そして、夜間に皮膚科医が担当している遠方の病院を紹介され、そこへ向かいました。

そこでようやく、カルシウム製剤による処置を受けることができたのでした。

投稿者は、その後の状態について「指5倍の太さになった」と表現しています。

最初は「外傷がない」と判断されたにもかかわらず、その後、指が大きく腫れるほどの症状が現れた。

この体験談が示しているのは、フッ酸事故では、見た目だけで重症度を判断することが難しい場合があるということです。

フッ酸の「見えないところ」で進む怖さ

フッ酸が一般的な酸による皮膚障害と違うのは、フッ化物イオンが組織の深部まで入り込み、カルシウムなどに影響を及ぼすことです。

そのため、濃度によっては痛みや腫れなどの症状が数時間〜24時間程度の遅れで現れることがあります。

米国毒性物質・疾病登録機関(ATSDR)の資料でも、低濃度のフッ化水素酸では、接触直後には症状が乏しくても、時間が経ってから重い組織障害が現れる場合があるとされています。

「たいしたことなさそう」

そう見えても、放置したら内部で壊死が進行していた。これがフッ酸事故の恐ろしさです。

見た目より先に、体の内部で障害が進行する可能性がある。

というのがフッ酸事故の恐ろしさです。

そして、もう一つ知っておきたいのが、なぜ治療にカルシウムが使われるのかということ。

フッ化物イオンは体内のカルシウムと結合する性質があります。そのため、フッ酸による重い曝露では、体内の組織と反応させないためにカルシウムグルコン酸などを使った局所治療や、状況に応じて注射による治療が行われます。

投稿者が受けた「カルシウム製剤による処置」も、こうしたフッ酸曝露に対する治療の一つです。

生還者が伝えたかった「自分で動く」ということ

この体験談で印象的なのは、フッ酸の恐ろしさだけではありません。

投稿者は、化学者にとっては常識でも、世の中にはフッ酸の危険性を知らない人がたくさんいると訴えています。

今回の投稿者は、暴露した薬品を伝えても最初の救急受診で納得できる対応を受けられなかったあと、自ら#7119に電話して別の医療機関につながりました。

もちろん、これは「医師を信用しない」という意味ではありません。

しかし「外傷なし」と判断されないよう、正しい治療をしてもらうために次のことには注意する必要があります。

もし自分がフッ酸に触れた時はどうするか

フッ酸が皮膚に付着した可能性があるなら、まず汚染された衣服などをゴム手袋などで直接触れずに取り除き、できるだけ早く大量の流水で洗い流します。

洗浄は、皮膚表面に残った薬品を取り除くための初期対応。その後の適切な診断と治療につなげる必要があります。

・何の薬品に触れたのかを、正確に伝える。

・「薬品がかかった」ではなく、「フッ化水素酸に曝露した」と伝える。

・製品名や濃度が分かるなら、それも伝える。

そして、事故直後は自分自身も見た目や痛みだけで「大丈夫」と判断しない。

すべてのケースで同じ行動が必要になるわけではありませんが、必要な場合にはフッ酸への対応が可能な医療機関につながることが重要です。

意外にも、多くの場面で使用されるフッ酸。SNSでは

「フッ化水素は、死ぬほど使いたくないけど、有機無機問わず化学なら使わないと研究ができない薬品ランキング第1位です。危険なので使用頻度がバグってます。」

「『フッ化水素酸?そんなもの使わないから大丈夫』言う人がほとんどであろうけども 火災や地震、または輸送中の交通事故で制御されず、管理者もいない状況で漏洩や飛散が起こることもある 熊やサメと同じだけちに命を恐れかす危険なものについては子供向け科学漫画でも何でもいいから履修を」

といった声も上がっています。この生還者の体験から読み取れる大きな教訓は多くの人が共有し知っておく必要があるでしょう。