高波の予想外の恐怖「学生が度々犠牲に」大学でも注意呼びかけ

アウトドアシーズン、海や川でレジャーを楽しむ人が増えています。それに伴い、全国各地では海や川で水難事故の報道が続いています。海で遊ぶとき、「波打ち際に近づかなければ大丈夫」と思うことはないでしょうか。

実は、海の事故の中でも高波の怖さは大きな落とし穴です。

静岡大学が新入生向けに紹介している、清水海上保安部による高波への注意喚起が、SNS上であらためて注目されています。

そこで伝えられているのは、「波が高いときには絶対に海には近づくな」というもの。

高波は、海水で濡れていない乾いた砂浜まで突然押し寄せるためです。

高波の恐怖・・波は予想外の動きをする

海岸を歩いた人なら誰もが見る光景ー海岸を見ると、波が届いている場所は濡れていて、その手前には乾いた砂浜が広がっていて、BBQや花火などのレジャー遊びをしても大丈夫そう。

多くの人は、この乾いた場所を見て「ここまでは波が来ない」と考えるかもしれません。しかし、静岡大学が公開している清水海上保安部の講話では、これが「危険な思い込み」であることが説明されています。

SNSではゲンゴロウ飼育ブログさんが引用し、話題となっています。

ゲンゴロウ飼育ブログさんが引用したのは、令和2年度の静岡大学入学式の後に行われた、清水海上保安部交通課長からのメッセージです。高波が海で遊ぶ人にとってどれほど身近であるかが分かる文章になっており、全文を読んでほしい内容となっています。

静岡大学「令和2年度静岡大学新入生の皆様へ(清水海上保安部からのお言葉)」

講話によれば、海岸や岸壁では100回に1回程度、それまでの波の高さの1.5倍ほどの高波が打ち寄せ、さらに1000回に1回程度、2倍もの高さの大波が来るのだと言います。

つまり、目の前まで来ている波だけを見て「ここならまだ波が届くことはないだろう、安全だ」と判断するのは危険ということになります。突然、普段よりはるかに大きな波が来れば、それまで乾いていた場所まで海水が一気に押し寄せる可能性があるためです。

実際に「乾いた場所にいて、高波に飲まれている」事例もあるといい、注意を呼びかけています。

静岡大学では過去、高波による死亡事故も

この注意喚起が重く受け止められる背景には、静岡大学で実際に悲しい事故が繰り返されてきたことがあります。

静岡大学によると、2018年8月、静岡キャンパス近くの海岸で遊んでいた学生3人が高波にさらわれ亡くなる事故が起きており、さらに2004年6月にも、静岡キャンパス近くの海岸でバーベキューをしていた学生のうち2人が高波にさらわれ、亡くなっています。

この事故での2人の死因は頭部打撲とされ、高波に飲まれた直後に海底へ叩きつけられたと考えられる状況だったと、清水海上保安部の講話で説明されています。

さらに遡ること2001年7月にも、同じ海岸で高波による事故が発生。学生1人が波にさらわれ、それを助けようとした学生も海に入り、2人とも沖へ流されています。幸いこのときはヘリコプターによって救助され、命を落とさずに済みましたが、講話では「紙一重の状況だった」と振り返っています。

こうして静岡大学では少なくとも2001年、2004年、2018年と、海岸で高波にさらわれる事故が繰り返されていました。若い命が一瞬の高波に奪われることは2度と起きてほしくないことです。

高波の怖さは「泳げるかどうか」ではない

ここで重要なのは、高波による事故を「海で泳いでいた人の事故」と考えないことです。

泳いでいなくても危険です。

むしろ、海岸で友人と話している、写真を撮っている、バーベキューをしている、波を眺めている――。

そんな状況でも、高波にさらわれる可能性があります。

そして、一度海へ引き込まれれば、泳ぎが得意かどうかだけでは命を守れません。

静岡大学の講話では、過去の事故が発生した際、いずれも波浪注意報が発表されていたことにも触れています。

「今日は海に入るつもりはないから大丈夫」

「波打ち際から少し離れているから大丈夫」

「濡れていない場所なら安全」

こうした判断そのものが危険なのです。

高波の危険から命を守るには「泳ぐな」ではなく「近づくな」

この講話で静岡大学が紹介する清水海上保安部は「波が高いときには絶対に海には近づかない」という言葉を訓戒として残しています。

これは「泳ぐな」という注意とは意味が違い、海に入らなければいいのではありません。

高波が予想されるときは、そもそも海岸へ行かない。これが最も確実な対策です。

毎年学生が入れ替わる・・「過去」を伝え続ける必要も

大学では、毎年、新入生が入ってきます。この事故の教訓を考えるうえでの課題は、こうした悲惨な事故を教訓として語り継げられるかどうか。

事故を経験した世代が卒業すれば、その場所で過去に何が起きたのかを知らない学生も増えていきます。特に地元出身ではない学生にとっては、その海岸が過去に何度も事故の現場となった場所なのか、見ただけでは分かりません。

海は晴れていれば穏やかに見えても、見た目だけで安全を判断することはできません。

大雨の前後や、日本海域で台風が発生している時などは、予定をキャンセルするなどして絶対に海に近づかないことが大切です。